⑦位置エネルギーと電気

    1.あなたの知らない蓄エネテクノロジーの世界

    ~④位置エネルギーと電気~




    このシリーズでは電気を異なるエネルギーに変換して蓄える新しい仕組みをご紹介してきました。最終回は位置エネルギーへの変換です。

    揚水発電は位置エネルギーを利用した巨大な蓄電池
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    揚水発電のしくみ(出典:Wikipedeia

    電気を位置エネルギーに変換して蓄える方法で、古くから知られているのが揚水発電です。これは夜間など電力需要の少ない時間帯の余剰電力で、下の池から上のダムに水を汲み上げておき、電力需要が増える時間帯に下の池に水を流して水力発電を行うものです。

    水力発電は水の位置エネルギーを利用した発電方法ですが、低いところにある水を電気の力で「仕事ができる位置」まで汲み上げるということは、電気エネルギーを位置エネルギーに変換させているということになります。

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    揚水発電の電力受給調整(出典:東京電力

    そのため揚水発電は巨大な蓄電池の役目があり、落水によってすぐに発電できることから、主に電力需要のピーク時を補う電源として使われています。

    電気はその時々のニーズに合わせて細かく調整して発電されていますが、受容を上回る電力は周波数や電圧の変動という形で吸収されます。電力会社ではそれが許容範囲内におさまるように、供給制御の容易さで、水力、ガスタービン、火力の順番で発電量と送電量を調整しています

    位置エネルギーを利用した様々な海外の蓄エネの試み

    さて、この位置エネルギーに着目して、海外では様々な実験が行われています。

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    出典:オランダ放送協会

    洋上に182基の風力発電装置を設置しているベルギーでは、近くの海にドーナツ状の人口島(2㎢)をつくり、大きな穴の部分の海水を外に汲み出したり流し込んだりすることで、風力発電の余剰電力の活用と不足の補てんを計画しています。これは揚水発電と同じ原理のシステムで、欧州迎合(EU)が14年12月に公表した将来有望な投資計画のリストにも、このプロジェクトが盛り込まれました。2021年の操業を目指して現在工事が進められています。

     

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    出典:Amusing Planet
    アメリカでは広大な土地を利用し、坂道になった10kmの線路に重力で電気機関車を走らせて発電する実験が行われています。この設備も風力発電の出力変動を調整するもので、余剰電力で電気機関車を坂道の上に上らせ、発電不足の時には電車を降下させて回生ブレーキで発電します。(回生ブレーキとは、電気機関車などがブレーキをかけてモーターの動力を必要としないときに、そのモーターの回転を発電に使う仕組みです。)

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    出典:gizmag

     

    また同じアメリカでは、水道管を通る上水道の流れで水力発電を行う実験も行われています。水道の水は基本的にダムや貯水池との高低差を利用して流れているため、大きな意味で、これも位置エネルギーの活用と言えるでしょう。

     

     

    シンプルなしくみの歴史と未来
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    池尻川発電所(出典:Wikipedia)

    揚水発電所は日本に約50か所あります。その中で一番古いのが野尻湖のほとりにある池尻川発電所です。この発電所は長野県にありますが、東北電力の施設として上越地方に電力を供給しています。野尻湖は新潟との県境に近く、川の水も日本海に注いでおり、東北電力の前身となった企業の一つ・中央電気の国友末蔵が、ライン川の水力発電所の視察をもとに立案し、日本初の揚水発電所として1934年(昭和9年)に完成させたものです。

     

    高低差を発電や蓄電に利用する位置エネルギーの活用には歴史と伝統がありますが、そのシンプルな発想が今、様々に形や規模を変えて電力貯蔵システムとして新たに研究開発されています。4回のシリーズを終えて感じることは、脱炭素社会の推進に向けて、どんなことでも「蓄エネ」に生かそうとする技術者達のユニークで熱い試みです。これから少しずつ変わっていくエネルギーのあり方を今後も見つめていきたいと思います。

    ※次回からは「送電」をテーマにお届けします。

     

    2.今月の家電ヒストリー「ガスコンロ」

    七輪からぐるりと華麗に変身

    ガス台、ガスレンジ、ガステーブルなど、今はいろいろな呼び名があり『ガスコンロ』という言葉を使うことも少なくなりましたが、コンロというのは立派な日本語で、漢字では焜炉と書き、本来は持ち運び可能な調理用の炉の事でした。

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    出典:ハーマン

    さて、このガスコンロですが、日本で最初に今と同じ形(ビルトイン)のガスコンロをつくったのは、ハーマン社(当時の社名は多田金属工業)です。ハーマンは大阪ガス向けの鉄製ガスコックで創業した会社ですが、ガス需要が急拡大し始めた昭和 30 年(1955 年)に鋳物製のガス七輪を世に出しました。今の家庭用ガステーブルとは異なり丸型の五徳にホースをつないでつかうものでした。ハーマンはその2年後に自

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    出典:ハーマン

    社のホウロウ技術を生かし、よごれの付きにくいホウロウ製卓上型ガスコンロを発売、これらが今、現在のガスコンロの最初の商品と言われています。ハーマンは昭和 41 年(1966 年)には消費者の魚焼きニーズに応えるため、業界初のグリル付 きコンロを発売し、この後も次々と新製品を生み出しました。と言っても、その業界初の魚焼きグリルはコンロ用バーナーを(ぐるりと?)下向きに回転させてグリル 用のバーナーに転用する方式だったようです。

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    出典:ハーマン

    ハーマンは湯沸かし器や風呂釜を主体とする陽栄製作所と、ガスコンロやオーブンを主体とする多田金属工業が合併してできた会社ですが、陽栄製作所は『ダンホット』、多田金属工業は『ターダ』というブランド名を持ち、それぞれ、TV番組の「服部半蔵 影の軍団(千葉真一主演)」(ダンホット)、「MBS水10ドラマ」(ターダ)を提供していました。今はないこのブランド名を聞いたことがある方は、番組を見たことがある方かもしれませんね。そんな話題に花を咲かせながら、鍋をつつくのが似合う季節になってきました。

     

    3.今月の雑学

    本当は「”歳”忘れ」だった忘年会

    今年も残すところあと2カ月。年末と言えば忘年会、という人も多いのではないでしょうか。

    基本 CMYK漢語としての「忘年」は、中国故事に「忘年の交わり」とある通り年齢差を問題にしないことを指しますが、日本人は「その年の苦労を忘れる」という意味に解釈し直したそうで、一年の労をねぎらう忘年会は日本特有の文化とのこと。その始まりは鎌倉もしくは室町時代。当時は皇族や貴族が和歌などを楽しむ厳かなものでした。

    江戸時代になると、庶民も年忘れとして酒やつまみを楽しんで一年の憂さを晴らすようになりましたが、現在のように賑やかなものではなく、親しい者同士で静かに行っていたようです。職場での宴会が始まったのは、明治時代になってから。ボーナスが出た官僚や帰郷しない学生が「どんちゃん騒ぎ」をするようになったとか。昭和になると、企業の忘年会を中心に規模、予算が拡大。女子社員の参加も増えていきます。また、楽器の演奏や手品などの芸を素人が披露する「かくし芸」、座布団回しなど宴会でしか通用しない「宴会芸」といった余興が付き物になりました。

    ちなみに、忘年会でよく聞く「無礼講」という言葉。鎌倉幕府を倒す意思を探ろうと後醍醐天皇が身分の上下やしきたりを抜きにして設けた酒宴が由来とされています。席順が厳しく決まっていた公家社会の宴席では、一度座った座から移動することはありませんでした。このしきたりを無視して座席を立つこと、つまり現代で言えば、参加者が席を立って上司や先輩にお酌をすることも、「無礼講」の本来の意味と言えます。「今日は無礼講で…」と言っても、あまり羽目を外しすぎず、自分の立場を弁えながら楽しい忘年会にしたいですね。

    4.あべクンが行く♪

    (2)マラソンを始めたきっかけ

    レース写真今回こそ、私がマラソンを始めたきっかけをお話したいと思います(笑)十数年前、友人と「松島ハーフマラソン大会 5kmの部」に出ようという話になったのが最初でした。私はそこそこ練習していたので友人より早くゴールする自信があったのですが、松島の坂道コースが予想以上に辛く、歩くようなスピードで走っていた折り返し地点前で友人にあっさり抜かされました。しかも、友人は遅刻して最後尾からスタートしたという話を後から聞き、とても悔しい思いをしたんです。そこからスイッチが入り、練習するようになりました。最初は近所にあった広瀬川河川敷1kmコースを、タイムを計りながら走り始めました。専門的な知識も経験もなかったので練習はimage1自己流でしたが、走るたびにどんどんタイムが速くなるのが嬉しくて毎日のように走っていました。ランニングサークルにも入り、一緒に走る仲間もでき、最初の10年間は毎年自己ベストを更新し、とても充実したランニング人生を送っていました…昔は…(笑)今は結婚などで生活環境も変わり、練習量も落ち、毎日お酒を飲むようになり体重も増え…11月には地元亘理町の大会に出場する予定なので、そろそろ気合いを入れなければ!

    (阿部寛行)

     

    5.ミカドのワンポイント解説「CCTV」

    地域社会を24時間見守るCCTV

    products05_02_image01CCTVという言葉をご存知でしょうか?中国中央電視台(China Central Television)のことではありません。ここでのCCTVはClosed-circuit Televisionの略で、直訳すれば閉鎖回路テレビという意味になりますが、簡単に言えば監視カメラのテレビシステムです。監視カメラと言えばビルやコンビニなどに設置されて、防犯に役立っていることは皆さんもご存じだと思いますが、CCTVはそれだけでなく、道路や空港・港湾の安全な運行を監視したり、ダムや河川に設置されて私たちの暮らしを自然災害から守る役割も担っています。

    私たちの暮らしを守ってくれているCCTVですが、災害による停電が発生しても、停止することなく現場の状況を送り続けるためには、電力のバックアップが必要です。ミカド電装ではCCTV用の屋外交流無停電電源装置を取り扱っております。詳しくは以下をご覧ください。

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    6.編集後記 

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    出典:JR東日本

    最近私が気になっているのは走るカフェ。列車に乗って季節の旬なスイーツを食べながら車窓の景色を眺めたりできるそうです。他にもコンセプト列車がさまざまありますが中でもキャラクター列車は予約が取れないこともあるようです。11月も連休がありますのでどれか乗ってみたいな~と考えている佐々木でした。

    (佐々木佳奈)

     

     

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