【今月の言葉】16回「社長はおられますか?」_17号

    【社長はおられますか?】
    「おる」は謙譲語です。「ここにおります」「仕事をしております」など、目上の相手に対して自分の行為を表す時に使う言葉です。
    そのため目上の人に「おる」を使うのはおかしいし、そこに尊敬を表す「られる」を使うのは二重敬語になるので誤用である、という考え方があります。
    ですが、この場合の「おる」は「ドアには鍵がかかっており」の「おり」と同様に、存在や状態を表す言葉として謙譲の意味を含まず、
    そこに「られる」を付けて尊敬語とする解釈は一部の辞書にも載っています。
    また西日本では「犬がおる」のように「おる」に敬語の意味合いを持たせない事もよくあります。
    ですので、「社長はおられますか?」は言い方として正しく、決して間違いではありません。
    特に関西ではごく普通に違和感なく受け入れられています。
    どうやらNG論議は「居る」を「いる」と発音する文化圏と「おる」と発音する文化圏の感覚の差から生まれたもののようです。
     「おられる」はインターネットで検索してみると「間違いである」「いらっしゃるを使うべき」と断定しているサイトも多くありますが、
    「先生は、先ほど急用とおっしゃっていらっしゃった」では言葉遣いが煩雑で聞きづらく、
    この場合は「先生は、先ほど急用とおっしゃっておられた」のほうがスマートでしっくり馴染みます。
    単に正誤だけにこだわるのではなく、組合せのバランスや言葉としての語感も大切と言えるのではないでしょうか。