【ヒストリー】41.電気機関車① ~世界初の電車は”電池”機関車だった~

    王立スコットランド芸術協会の博覧会の広告
    出典:Coupar Angus Electric Vehicles Ltd

     

    最初の電気機関車といわれているのは、スコットランドのロバート・デビッドソンが1837年、アバディーンで製作したもので、電源にはガルバニ電池(亜鉛一次電池)を使用していました。彼はその後、1841年にこれを大型化し、 Galvani(ガルバニ) と名付けて 王立スコットランド芸術協会の博覧会に出展し、翌1842年9月にはエディンバラ – グラスゴー間の鉄道で試験走行も実施しました。

    ロバートの狙いは、6トンの荷物を牽引して走行できることを実証し、電気機関車を事業化するスポンサーを募りたかったのです。しかし彼の目論見は失敗に終わりました。当時はまだ蓄電池が発明されておらず、短命な一次電池での走行は距離的にも無理があり、しかも亜鉛電池そのものが非常に高価だったため、石炭走行の40倍ものコストがかかりました。

    実は、そのときすでに蒸気機関車の実用化が始まっており、イベントの一部として旅客走行も行われていました。世間の関心は蒸気機関車のほうに集まっており、電気機関車はまだまだ、投資家が魅力を感じる乗り物では全くなかったのです。

    ちなみに、世界初の直流電動機を発明したトーマス・ダヴェンポートが、最初にモーターで動かしたものも機関車でした。と言っても、1.2mの円形レールを走る鉄道模型だったのですが、そのトーマスもまた、モーターの事業化を夢見ましたが、亜鉛電池が高価だったために破産しています。当時、電力網はまだなく、高すぎる電源コストに見合うだけの電動機の市場は存在しなかったのです。(つづく)