【電気を送るしくみの今とこれから】07_電気の流儀③~整流って知ってますか?

    特集記事「電気の流儀」です。今回は、3回シリーズで、直流、交流、整流について解説をしています。

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    現在の電化製品は大半が直流で動きます。初期の電化製品はつくりも動きもシンプルでしたが、今は、ただ羽根を回すだけの扇風機と言えども、複雑に回転数が制御されています。以前は新商品の売りだった「マイコン制御」という言葉も、今ではそれが当たり前になり、家電製品のキャッチコピーに使われることもなくなりました。

    コンピュータのような精密機器だけでなく、今はほとんどの製品が電子制御されていますが、心臓部である半導体は直流電源でなければ動きません。一方、電力会社から供給される、コンセントの電源は交流です。そのため、コンピューターや今どきの家電製品を動かすためには、交流を直流に変換する仕組みが必要になります。

    交流を直流に変換することを整流と言います。交流は電圧のプラスとマイナスが波のように高速で入れ替わる電気の流れですが、交流を直流に変えるということは、この波をなくし、なるべく向きが変化しない電気にするということです。

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    整流は、順方向の電流は通し、逆方向の電流は通さないダイオードを利用して行います。一番単純な方法は、電圧のマイナス部分をカットして、プラスの電圧だけ流すことで、これを半波整流と言います。半波整流は電子回路にダイオードをひとつ組み込めばいいだけなので、回路が単純で安価ですが、電気の半分を遮断しているため効率が悪く、大電流には対応できません。また、電気の波がデコボコなので、高品質の電気を必要とする精密機器には使われず、もっぱら負荷や容量の小さい製品に使われています。

    一方、コンピューターやエアコンのように、電気の品質や容量が問われる製品には、マイナスの電圧を反転させてプラスに変え、なるべく隙間のない形にする全波整流という整流方法が採用されています。これによって半波整流よりも効率がよく、デコボコの度合いも軽減されます。

    しかし、いずれの方法で整流しても、蓄電池から供給される電気のように、きれいな直線の電気にはなりません。整流しても残る電気の波のデコボコを脈流と呼びますが、この脈流をなるべく抑えて平坦にするために使われるのがコンデンサーです。

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    コンデンサーは電気を貯めたり流したりすることができる電子部品で、回路の中では電子の貯水池のような役割をします。整流された電気はコンデンサーを通ることで平滑化され、ここでようやく直流電気とほぼ同じ波形になります。

    整流という言葉は、普段あまり耳にしないので、馴染みが薄く感じられるかもしれませんが、昭和の初期にこの仕組みを採用して爆発的に売れた電化製品がありました。それが真空管ラジオです。真空管には増幅や検波だけでなく整流の機能もあります。これがコンセント(交流電源)に差してつかえるラジオ(直流電源)を可能にし、据え置き型ラジオが一般家庭に広く普及しました。

    さて、デジタル化した電化製品には整流の仕組みが欠かせませんが、現在の整流には半導体ダイオードが使われています。条件によって電子の動きが変わる半導体の性質を利用して半波整流や全波整流を行います。

    それにしても、直流で動く電化製品がここまで増えてしまうと、商用電源も直流にしたほうが効率がよいのではないか?という考えも生まれてきます。現在の電力ネットワークがすぐに大きく変わることはありませんが、そういった視点から、今では直流送電の実験や将来に向けての研究開発も行われています。

    技術は日々進歩しますが、未来の送電はどう変わっていくのでしょう?直流送電に固執した結果、電流戦争で交流派のテスラに負けてしまったエジソンですが、やがていつか勝敗を塗り替え日が来るのでしょうか?そんなことを考えながら、このシリーズを終えたいと思います。


    出典 ダイオードイラスト(上)・コンデンサイラスト(下)/株式会社村田製作所、半波整流と全波整流グラフ/無線工学の基礎