【ヒストリー】34.ミシン~乱世にケリをつけたシンガー社のあの方法~

    ミシン開発の歴史は意外に古く、フランス最後の国王、ルイ16世が生まれた翌年(1755年)、仕組みの違う二つのミシンが英国で発明されています。けれど量産はされず、その後も各国で数名の技術者が次々と特許を取得しますが、製品化には至りませんでした。

    そんな中で、フランスのバーシレミー・シモニアが1830年に特許を取り10年後に80台のミシンをつくってパリの軍服縫製工場に納入します。けれど、このミシンはすべて破壊されてしまいました。首謀者はギルド社会のボス達。彼らは自分達が支配している多くの縫子が職を失うことを恐れ、工場に暴徒を差し向けたのです。

    当時のミシンを取り巻く状況は混沌とした乱世模様でした。せっかく特許を取っても製品化がうまくいかなかったり、開発者の心変わりで特許が放置されるなど、まだ成功者が誰も出ていない状態の中、一獲千金を夢見る若者が過去の特許の改良版に意欲を燃やしていました。

    ニューヨーク州ピッツタウン出身のアイザック・メリット・シンガーもその一人でした。木工会社を起こしていたシンガーは営業先の工場で他の人がつくった未完成のミシンを見せられ、実用化につながる改良を思い付きました。そして自らも特許を取得し、「シンガーミシン」として売り始めました。

    ところが今度はそれが、自分の特許を侵害していると主張するエリアス・ハウから訴えられ、多くの訴訟を抱えることになってしまいました。シンガーは15,000ドルの和解金をハウに払う代わりに販売権の取得を提案し、この和解がシンガー社躍進のきっかけとなりました。

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    シンガーミシン

    シンガー社の画期的なところは、世界で初めてともいわれる割賦販売を考案したことです。今でこそ当たり前の分割払いですが、高額商品を信用販売する発想や仕組みは当時まだなく、この方法が大当たりして、シンガー社のミシンはあっという間に他社製品を駆逐し、1920年代頃には世界の覇者となりました。

    ちなみに、ミシンは英語でソーイングマシンですが、ネイティブな発音でマシンという言葉を先入観なしで聞くと、「ミシン」に聞こえます。そのため日本ではソーイングマシンがミシンと呼ばれるようになりました。

    以下をクリックして、ぜひ試聴してみてくださいね。どう聞いても「ミシン」にしか聞こえません!
    ↓ ↓ ↓

    machineの発音