【リチウムイオン電池講座】No.05_「横からリチウム」最終回 未来の電池の有望株

     

    (前回)めんどくさいけど触れないわけにもいかない・・リチウムイオン電池のバリエーション ➡ 

     

     

    (最終回)さて「横からリチウム」最終回となる今回は、話題の「全固体電池」をはじめ、様々な未来の有望株を紹介していきたいと思います。

     

    まずはリチウムイオン電池の現状をおさらいしておきますと、

    1)正極材の違い
    ・コバルト、・マンガン、・リン酸、
    ・ハイブリッド(三元;ニッケル・マンガン・コバルト)または(NCA;ニッケル・コバルト・アルミニウム)の4種、

    2)負極材の違い
    ・チタン酸、

    3)電解質の違い
    ・リチウムポリマー、

    の概ね6種のリチウム電池が量産化され、様々な用途に活躍しています。

     

    現在日本では、より高性能な電池素材の開発のため、「J-PARC(大強度陽子加速器施設)」内で稼働している、蓄電池研究専用ビームライン、特殊環境中性子回折装置「SPICA(スピカ)」を使った研究が進んでおり、これまでブラックボックスであった「電池の中で何が起きているか」が解明されつつあります。また既存の材料を使った電池でも技術革新が起こりつつあります。

    今回は未来の有望株と、その他番外編をお送りしてまいります。

     

    1,「バインダーレス電極」で容量2倍

    CNTカーボンナノチューブ
    カーボンナノチューブの幾何学構造図Wikipedhiaより

    バインダーとは「活物質」と呼ばれる粒子状の極材を極板に接着する、いわばハンバーグの「つなぎ」のような接着剤料のことです。

    バインダーは樹脂で作られており、電気を通しませんので、電池の性能面では、高密度化の邪魔者。とはいえ、これがないと活物質がパラパラと極板から離れていってしまいます。

    そこで信州大学の研究グループと戸田工業では、導電性の高いCNT(カーボンナノチューブ)をバインダーの代わりに使うバインダーレス電極を開発中。完成すれば既存のリチウムイオン電池の容量を2倍にすることが可能になるそうです。

     

    2,次世代リチウムイオン電池の本命? 「全固体電池」

    全固体電池は、通常は液体の極板間の電子の流れを仲立ちする電解質を固体状にしたもの。液体の電解質と違い、液漏れしたり電極と液体が反応して劣化したりしにくいのが特徴です。全固体電池の大きな利点は何と言っても安全性です。EVなど電池を搭載した移動体が万一衝突事故を起こしても、全固体電池なら燃えにくく、かなり安全といえます。また、EVで課題となっている充電時間も分単位になると言われています。

    課題は量産技術。電解質の材料となる硫化物は大気中や水中で不安定なため、製造が難しいのです。また、電極は充放電時膨張や収縮するので、個体電解質だと接触面積を維持することが困難になります。技術的には日本が一歩リードしており完成が待たれます。

     

    3,発想の転換 「アルミニウム空気電池」

    空気亜鉛電池
    補聴器などで使用される軽量な空気亜鉛電池 Wikipediaより

    アルミニウム空気電池は正極活物質として空気中の酸素、負極活物質としてアルミニウムを使う電池です。空気電池そのものは小型・軽量化ができるので補聴器の電源などに広く利用されてきました。充放電できる二次電池もあるのですが、今注目されているのは放電したら充電はできないワンウェイの一次電池です。

    安価で資源としても豊富なアルミニウムを純度の低いまま使い、低コストで高容量なアルミニウム空気電池を作り、使い切ったら乾電池のように、スタンドで載せ替えてしまおうという発想なのです。カナダでは1,600Km走れるという実験データもあるそうです。

    日本ではトヨタが開発を進めていますが、課題は自己放電率の高さと放電残渣と呼ばれる容量損失。現在、添加剤等による解決が模索されています。

    ※自己放電とは、使っていなくても電池の内部で放電が起こってしまい容量がなくなってしまう特性。  放電残渣とは、反応が発生した物質などに阻害され、放電が途中で続かなくなることを指します。

     

    4,番外編 「フレキシブル電池・ストレッチ電池・生体電池」

    これらはいずれもEVなどに大電力を供給するものではなく、小型軽量の電池です。

    1)フレシキブル電池は紙状の形態で、くしゃくしゃにしても性能を保つことができます。また2)ストレッチ電池もシート状でミウラ折りされており、展開や折りたたみが可能、ねじれや曲げに強い構造になっています。

    どちらも大変薄いので心電計など身体貼付け型デバイスや腕時計型のウェアラブルデバイスへの利用が期待されています。

    3)生体電池は、元々電気信号で動き、電解質が充満している人体などに貼り付けて電気を作る電池です。

    人体にダメージを与えること無く人体の電気を直接利用したり、皮膚上の汗や血液中で電気を作ることができる生体電池の開発が進んでいます。IOTが進んだ将来、人間は様々な生体電池とデバイスを身につけて健康を謳歌することになるかもしれませんね。

    *ミウラ折り 人工衛星のパネルの展開で使われる折り方です。

     

    5,番外編2 VPP リユース電池

    こちらはいずれも現在のEV用電池を活用するアイディアです。

    1)VPP(バーチャルパワープラント)は点在する駐車中のEVを仮想的にまとめ、電力貯蔵設備に利用しようというアイディア。IOTの発達により、現実に一歩近づいてきました。

    2)リユース電池は、EV用としては容量が低下して使用に耐えなくなってしまった電池を、電力貯蔵用にリユースしようというアイディアです。ローコストで電力貯蔵ができることが魅力です。

     

    6,番外編3 幻(?)の量子電池

    2014年2月「国際二次電池展」で化学電池も、物理電池(キャパシタ)も超える夢の電池として出品されたのが、「battenice(バテナイス)」です。

    量子技術を応用しているとされ、既存の電池より一桁多い出力特性、二桁多い放電回数が話題を呼びましたが、6時間放置で50%も自己放電してまうなど、現状では解決できない課題も多く、メーカーでは未だ「開発中」とのこと。

    夢物語と言われた量子コンピューターも実用化が進んでいますから、量子電池も今後に期待ですね。個人的にはネーミングがgoodだと思います。

     

    さて、GSユアサのリチウムイオン電池は、ハイブリッド車やEVだけでなく、次世代中型旅客機「B787」、国際宇宙ステーション「ISS」、深海探査船「しんかい6500」、潜水艦「そうりゅう」など、高い信頼を要求されるシーンで活躍しており、非常用・パワー用など据え置き用途にも最適です。

    ぜひこちらもご覧ください。

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    ミカド電装商事の産業用リチウムイオン電池