【電気を送るしくみの今とこれから】15_産業用蓄電池利用の基礎知識① ~そもそもいつどこで何に?~

    みかドン ミカどん当社は蓄電池(バッテリー)を扱う会社ですが、そうお伝えすると多くの方に「車のバッテリーですか?」と聞かれます。ミカド電装で扱っている蓄電池は産業用蓄電池と呼ばれ、主に建物の非常用電源や太陽光発電などに使われるものです。今回は、皆さまの疑問にお答えして産業用蓄電池について簡単に解説します。第1回目は非常用電源についてです。※全記事はこちら

    配電室
    画像:Wikipediaより

    ビルの電気室はいったい何をするところ?

    非常用電源に使われる産業用蓄電池は、通常、ビルや工場の電気室に何十個も組み合わせて配置されています。ところで、この電気室というのは一体何をする部屋なのでしょうか?まず最初に、産業用蓄電池が設置されている電気室のほうから先に解説します。

    ビルや工場、病院や公共施設には、地下などに電気室(または機械設備室等)と書かれた部屋があるのはご存知かと思います。電気室は、電力会社の電気を高圧で引き込んでいる建物にあり、部屋の中には高圧の電気を低圧に変えて分配し、各フロアーや特定の動力機械に送るための設備が入っています。

    電力会社の電気を利用するには色々な契約がありますが、一般のご家庭の場合は、6600Vで送られてくる電線の電気を、電柱にある変圧器で電気製品が利用できる低圧に変換し、100V(または200V)の状態で家の中に入ってきます。

    画像:「マンション管理ゼミナール」より

    一方、電気をたくさん使うビルや工場は、高圧の電気の供給を受ける契約を電力会社と交わしており、その場合は高圧の電線を建物に引き込み、契約者が自分の施設内に変圧器を設置して各所に配電します。

    まとめると、ビルや工場の電気室には、電力会社の高圧線を①受電して②変圧して③配電するための様々な設備が入っているわけですが、実はそれだけではありません。

    その建物の用途にも寄りますが、相応の規模や目的を持つ施設の電気室には、通常、停電に備えた非常用電源設備が設置されています。

    そして、産業用蓄電池は、それらの非常用電源設備を強力にサポートする装置として、電気室の中にたくさん置かれているのです。※電気室ではなく建屋(たてや:キュービクル)と呼ばれる倉庫のような別棟に設備一式を配置している場合もあります。

    自家発電システムにも「電気が必要!」

    「当ビルには自家発電設備が入っているから停電時も安心」。そう思っている方も多いと思いますが、実は自家発電装置を動かすにも電気が必要なことは、一般にはあまり知られていません。

    1.何かの要因で電力会社からの電気が途絶えてしまった場合は、自家発電機を起動させて発電し、施設内への配電系統を切り替えますが、その監視システムにまず電気が必要です。電気が止まった停電時こそ動いていなければならないシステムです。

    2.また、停電時に配電系統を切り替えて、電力会社からの電気を遮断し、発電機からの電気を施設内に流すために、ブレーカーの上げ下げにも似た物理的な装置の動作がありますが、監視システムからの信号を受けてこれを自動ですみやかに行うには、やはり電気が必要です。

    3.そして自家発電機。車のエンジンの点火やバイクのキックスターターのように、自家発電機もタービンが回り始めるためには、回転力を得るための外からのエネルギー(電気)が必要です。

     

    (画像:当社資料より)

    いかがですか?停電のような緊急時こそ、逆に電気が必要になります。そして、その役目を担っているのが産業用蓄電池なのです。

    産業用蓄電池は、電気室のラックに入っていたり、室内でむき出しに配置されていたり、別棟の建屋(キュービクル)に納められているなど、置かれ方は様々ですが、その建物の用途や必要とされる電圧に応じて、通常は何十個も組み合わせて設置されています。

    近年では、高密度・高寿命・省スペース(コンパクト)のニーズを受けて、リチウムイオン蓄電池の需要も伸びています。

    自家発電機が稼働するためには数十秒かかります

    オフィス作業中に停電になったときに、非常用照明だけが薄暗く点灯した経験をお持ちの方もいらっしゃると思います。私も経験したことがありますが、フロアー天井の埋め込まれた一部のライトだけが灯り、同僚たちと「ホテルの様だね」と話していた思い出があります。

    非常用電源は、どこまでの電気をバックアップするのか?によって、設備の規模も仕組みも異なります。具体的には、消防法や建築基準法などにもとづいた防災用の自家発電設備なのか、 ビル全体の機能を維持するような発電機なのかによって、バックアップする電気の容量や停電時の動作なども変わってくるわけです。

    また、停電が起こっても、電力会社の電気が数秒ですぐに復旧することもあるため、自家発電装置には、一定時間を置かないと作動しないように、タイマーが付いています。そのためすぐには動き始めません。

     

     

    ですが、発電機はしくみの上でも、回転数が上がり安定した電圧が出るまでに時間がかかるため、停電時になっても電気が供給され始めるまでには、通常、10秒から40秒程度かかります(システムの規模や発電機の種類にもよります)。

    (※上の動画はインターネットに公開されていた「停電~非常発電起動~電源切り替え」という動画をお借りしたものですが、ご参考になれば幸いです。)

    つまりタイマーで規定以上の時間が経過して自家発電機が稼働しても、実際に電気を供給し始めるまでにはさらに時間がかかるため、実際には数十秒以上電気が使えず、最低限の避難用照明しか点いていない状態が続きます(ここでも蓄電池が大活躍)。けれど、病院や金融機関、企業のデータセンターやサーバー、製造業、緊急防災センター、災害監視システムなど、社会の中では少しの瞬断も許されない設備がたくさんあります。その場合は、無停電電源装置という、常時、蓄電池経由の電気を使う方法も採用されています。

    (➡次回:②電源バックアップ蓄電池の役割