⑤フライホイールバッテリー

    1.あなたの知らない「蓄エネ」テクノロジーの世界
    ~②フライホイールバッテリー~

    前回は従来の発想で電力を貯蔵する蓄電池がテーマでした。今回は電気を動力に変えて保存するフライホイールバッテリーについて解説いたします。


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    出典:さくら教育研究所

    “電気を動力に変える”と言われても、ピンとこない方もいらっしゃると思います。わかりやすい例として、発電の仕組みを思い出してみてください。発電所では様々なエネルギーを使ってタービンを回していますが、このタービンの回転運動から電気が生まれます。それは磁界の変化で電力が発生する電磁誘導の法則によるものですが、難しい説明は、はぶきます。つまり、モノが回転している状態からは電気が得られるということが一番のポイントです。

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    出典:Wikipedia

    今、再生可能エネルギーの出力変動を吸収する仕組みとして注目されているフライホイールバッテリーは、内部で円盤が回転し続けている装置です。円盤は超電導の真空の中で浮かせてあるため摩擦がほとんどなく、一度回転させると動力源がなくても慣性によってそのまま回転し続けます。その回転運動から電気を取り出し、回転が落ちてきたら再び電気で速度を上げてやることができます。つまり、フライホイールは蓄電池の放電・充電と同じ働きをするといえるでしょう。

    このフライホイールを太陽光発電と組み合わせれば、日中は余剰電力を吸収して回転速度を上げ、夜間は慣性で回り続ける円盤から電気を供給することができます。また、再生エネルギーだけでなく、停電や負荷変動、そして系統の安定化や平準化のために、様々な場所で活用されることも想定されています。

    フライホイールバッテリーが機能的に優れているところは、電気的な入出力が容易で瞬時の変動に対応できることです。また、蓄電池の場合は出力と蓄電容量が固定しているため、大電力に対応するにはユニットの数を増やしていくしかありませんが、フライホイールではひとつの装置で自由に設計できるのも利点です。ほかには、原理が簡単で長寿命であること、低温でも機能が劣化しないことなどが長所としてあげられます。一方、短所としては、エネルギー密度が低いこと、冷却装置が必要なこと。最新の技術では超電導線にイットリウムというレアメタルを使うので、その調達にも課題が感じられます。

    円盤回転の慣性を利用したフライホイールの仕組み自体は新しいものではありません。軸に取り付ける接触型のものは、エレベーター、クレーン、大型回転機などの巻き上げ装置がある設備ですでに実用化されています。そして近年は超電導の研究開発が進み、重量のある大型の円盤を浮上させることが可能になったため、蓄エネの新しい技術としても注目され始めました。そのため従来型のフライホイールと区別して、「次世代型フライホイール」「超電導フライホイール」などと呼ばれることもあります。

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    出典:NEDO

    最近の話題では、鉄道総合研究所ほか複数の企業により共同開発された超電導フライホイール蓄電システムの試験運転の様子が、今年(2015年)の4月15日に報道公開されました。このシステムは試験運転期間を終えたあと、山梨県米倉山のメガソーラーに移設されて実証実験が開始される予定です。

    ちなみに戦時中は敵国語である英語が使えなかったため、フライホイールのことを「弾み車」(はずみぐるま)と言っていました。そのほうが慣性に弾みがつく特徴をよく表している、
    わかりやすい表現かもしれませんね。

    2.今月の家電ヒストリー「電気冷蔵庫」
    ~冷蔵庫が買えれば一軒家も買える?!~

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    ①GE社製品をモデルに開発された国産第一号電気冷蔵庫SS-1200(昭和5年)(出典:東芝未来館)

    日本における冷蔵庫の歴史は、1923(大正12)年に三井物産が、GE社の電気冷蔵庫を初めて輸入したことから始まります。GE社はそれまでの手押しポンプや蒸気機関などに代わり、電気コンプレッサーで冷媒を圧縮する電気冷蔵庫を、1910年(明治43年)に世界で初めて開発し、これが世界で最初の電気冷蔵庫になりました。そして三井物産が輸入した、GE社製電気冷蔵庫の国内販売を手掛けながら、自らも熱心に研究開発を進め、ついに国産第1号の商品を世に生み出したのが芝浦製作所(現:東芝)です。

    芝浦製作所は1930(昭和5)年にGE社の製品をモデルにして、SS-1200と呼ばれる自社製品を完成させ、3年後に販売を開始いたしました。その陰には、GE社の出向役員から「日本の技術力では無理」と断言されたことに発奮した、藤島亀太郎氏(後に東芝機械初代社長)らの懸命の技術開発と努力がありました。

    初めての国産電機冷蔵庫、SS-1200の当時の価格は720円。これは庭つきの家が一軒買えるくらい超贅沢品であっため、購入者はお金持ちや高級レストランなどに限られました。しかしその後、1960年代に技術の著しい進化とコストダウンがはかられたため、電気冷蔵庫はここで一気に一般家庭に普及しました。

    それ以前の電気冷蔵庫は白黒テレビ・洗濯機と並んで「三種の神器」と言われ庶民のあこがれの的でしたが、低価格化で誰でも買えるようになり、次第に家庭の必需品となっていきました。ちなみに、電気がまだ普及していなかった時代に、実験用のアンモニア吸収式冷凍機を使い、日本で初めて人工的に氷をつくったのは東京大学です。けれどそれが最初に使われたのは、なんと熱病になった福沢諭吉のためでした。今は、福沢諭吉のようなVIPでなくても、手軽に氷が手に入る時代です。日本で初めて製氷機の恩恵にあずかった諭吉が見たら、驚くかもしれませんね。

    3.しゅうじクンのおすすめ コーヒー編その6
    ~珈琲道の極意は炒りたて・挽きたて~

    沢田秀二常務のおススメとこだわりを、編集部が聞き書きして毎月掲載しています。今月は最終回です。


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    コーヒー豆について熱く語り合う「スリーズコーヒー」鎌倉店長と弊社の沢田常務

    「寮生活をしていた頃、仲間に喫茶店の息子がいて、時々コーヒーを淹れて見せてくれました。ドリッパーにお湯を注ぐと、下からふわっと膨れて上がってくる豆。挽きたての豆じゃないとこうはなりません。ちなみに、豆はせめて2杯分以上淹れないと美味しくないんです。一杯ずつ淹れられるドリップオン式も売られていますが、個人的にこれはどうしても美味しく淹れられません(笑)

    コーヒーについてこだわりやおススメを色々語ってきましたが、一番言いたいのは、コーヒーは「炒りたて・挽きたて」ということです。炒ってからは2週間以内、挽いてからは30分以内。特に挽きたてというのが重要で、もっと言えば30秒以内かも。挽いた後はすぐに劣化が始まってしまうので、挽き置きは絶対にダメなんです。

    …と言いながら、会社で飲むのはネスカフェ(笑)自分の中に、豆から炒って飲むコーヒーと、インスタントで飲むコーヒーの、2つのコーヒー道があるんですよね。」