単位の歴史(25)~超音速で飛ぶ飛行機は分速や時速よりもマッハが大事~

みかドン ミカどんマッハと聞くと往年のアニメ「マッハGoGoGo」を思い出してしまう方もいらっしゃるようですが、とても速いイメージがあるこの単位は、実は条件によって値が変わる相対的なものでした。

マッハの速度は条件によって変わります

(画像:日立ハイテク

マッハはロケットや戦闘機など、音より速い飛行隊の速度を表すときに使われています。単位は音速を基準としておりマッハ1は音の速さと同じです。

音速は条件によって変わりますが「1気圧、15℃」のときにマッハ1は約340m/sになります。これを時速に直すと時速1,224kmで、仙台から四国まで1時間で行くぐらいの速さです。(ちなみに仙台から松山までの平均フライト時間は2 時間 40 分です。)

ですがその値は常に一定ではありません。前述のように音速(音の速さ)は条件によって変わるので、ジェット機が巡航する高度1万mの場合は、マッハ1はおよそ300m/秒、時速に直すとおおよそ1080km/hになります。

つまりマッハという単位は絶対的な数字ではなく、音速との比を表している相対的な値なんです。そのため正確には「マッハ数」と呼ばれ、単位というよりは係数のような扱われ方をされているようです。

そんな揺らぎのある数字がなぜ使われているか?というと、実は超高速で飛行する物体ほど音速との対比がとても重要だからです。

飛行物体が音速を超えると飛行環境が激変する

戦闘機が音速に近いスピードになると発生することがある「ベイパーコーン」と呼ばれる雲(Wikipedia

エルンスト・マッハ(Wikipedia

エルンスト・マッハは超音速気流の研究で有名な科学者です。

マッハは静止している流体の中を運動する物体が音速を超えたとき、空気に様々な劇的変化が起きて衝撃波が生じることを、当時は最先端だった写真撮影を用いて実験的に示しました。

この研究がなければ、ジェット機の開発は随分遅れただろうと言われていますが、音速を超えるか超えないか?など、音速との比較が物体の飛行に大きな影響を及ぼすため、分速・時速のような絶対的な速度とは別に、マッハという単位が使われるようになりました。

空気には粘着性があり、非常に速いスピードで空を飛ぶと、飛行体の様々な箇所で圧縮されて大きなエネルギーを発します。それが地上に到達すると大音響と共にガラスを割るほどの衝撃となるため、高速の飛行物体が地上に影響を与えないためには、衝撃波の対策がとても重要になりました。つまり超高速飛行の場合は、飛行のスピードだけでなく音速との比較も大切になってきたわけです。

半世紀たっても旅客機のスピードが早くならないワケ

コンコルドのエールフランスモデル(画像:Simon_sees[CC BY〈https://bit.ly/2Z0AaSy〉])

実は旅客機の飛行速度はこの半世紀の間、ほとんど変わっていません。

超音速旅客機といえばフランスのコンコルドが有名ですが、コンコルドは超音速飛行による燃費の悪さ、細長い期待による100名という少ない乗客数の問題のほかに、超音速飛行をすると衝撃波が発生して地上にまで影響を及ぼすことから、人が住んでいる地域上空では超音速飛行を行うことができず、あまり実用性のないものでした。

現在では速さよりも燃費や環境への影響が重視されており、きっかけは、「コンコルド」と同年に初飛行を迎え、大量輸送時代の先駆けとなった「ジャンボ」ことボーイング747型機といわれています。

「コンコルド」と比べて「ジャンボ」は、スピードでは劣っても、段違いの座席数で一度に多くの旅客を運べました。1960年代以降のジェット旅客機は一般的に、ジェットエンジンのひとつである「ターボファンエンジン(取り込んだ空気を圧縮後、その一部を燃焼に利用し、残りはファンノズルから直接大気中へ噴出して推力を得るもの)」を使用していますが、このエンジンは音速を超えると効率が下がります。

そのため今は、あえて速度が音速を超えないように設計しつつ、そのなかで燃費の良さや低騒音を目指す、といった状況が続いているわけです。

現在、音速を超える飛行機は戦闘機に限られますが、なんと最新の情報では、米ユナイテッド航空が6月3日(2021年)に、現在の旅客機の2倍の速度で飛べる超音速旅客機を購入すると発表したようです。

(リンク)米ユナイテッド、超音速機を導入へ 飛行時間が半分に?

同社の発表では、安全性などの基準を満たせば米ブーム・スーパーソニックから超音速旅客機「オーバーチュア」15機を購入する予定で金額は非公表とのこと。

コンコルド以来の超音速旅客機は実現するのでしょうか?衝撃波は?温室効果ガスは?燃料には、廃油や植物などからつくられた二酸化炭素排出量の少ない「持続可能な航空燃料(SAF)」を使うそうですが、速さと環境対策をどう両立させるのか続報を待ちたいところです。

(ミカドONLINE編集部)


引用/参照記事 航空実用事典 マッハ : 少しかしこくなれる単位の部屋 : 日立ハイテク 旅客機の速度 実は半世紀以上変わらないワケ かつては「スピード競争」も下火の経緯 など

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