【電気を送るしくみの今とこれから】05_電気の流儀①~直流ってなに?

    特集記事「電気の流儀」です。今回は、3回シリーズで、直流、交流、整流について解説をしていきます。

    電池の電気は直流です
    電気には2通りの流れ方があります。ひとつは「直流」です。直流とは、一定の電圧を保ったまま常に同じ方向に流れる電流。もうひとつは「交流」で、非常に短い周期の変動を繰り返しながら波のように流れる電流です。電気は押し出す力(電圧)と流れる量(電流)で動作するエネルギーですが、直流を理解するためには、水の入った水槽の排水口から水が流れ出る様子を想像するとイメージしやすいと思います。水槽に溜まった水が流れるときは、向きも水圧もほぼ一定で、目まぐるしく変動はしませんよね。

    水槽に例えた電圧のイメージ.gif

    この仕組みで製品に電気を供給するのが乾電池や蓄電池です。ですから、電池やバッテリーから流れる電気は直流です。電源から何の加工もされない電気が直接的に供給されるため、DC(Direct Current:まっ直ぐな電流)と呼ばれます。

     

    直流と電池.jpg

          発電所の電気は交流です

    ところが、交流になると話は少々複雑になります。交流の電気の場合はどこかに溜まったエネルギーが外に出ていくのではなく、発電所という施設の中で装置の回転運動によって電気がつくり出されているからです。

    発電所の発電機b.jpg

    電池のように化学反応で発生させる電気と異なり、発電機でつくりだす電気は磁石を機械的に動かして発電させるものですが(フレミングの右手の法則:磁場で導体を動かすと電流が発生する)、磁石にはN極とS極があるため、磁石を動かすということは、発生する電気の電圧に強弱が生まれるということになります。

    その一番高いところをプラス、低いところをマイナスとすると、発電所から送電される電気は、極性(プラスとマイナス)が常に細かく入れ替わることが、わかると思います。それが交流と呼ばれる電気で、AC(Alternating Current:交互に変わる電流)と呼ばれます。

    発明当時の発電機は、電池(直流)の代替品として開発されたため、直流電流を出力するように工夫されていました。インフラとしての電力システムを考案し、世界で初めて発電所を作ったエジソンも、送配電したのは直流の電気でした。

    直流と交流の波形の違い.jpg

    しかしエジソンが強く提唱した直流送電は、そのままでは遠くまで電気を送れないという短所があり、電気の広範囲な普及と共に、距離やコスト面で有利な交流送電を提唱したライバルのテスラに敗北しました。そして、世界の商用電力は交流が主流となりました。

    電気の変換、そして品質
    さて、電力会社から供給される電気は交流ですが、電気製品の中には直流で動作するものもたくさんあります。具体的には電池で動くもの、例えば、携帯電話やパソコン、特にパソコンはコンセントの交流電源を直流に変えるACアダプターが付いているのでわかりやすいですよね。

    他の電化製品でも変換装置を内蔵しているものが多くあります。また、電力会社の電気は、製品に影響のない、一定の範囲内で微妙に電圧が変動していますが、精密機器の場合は、小さな変化でも誤作動につながることがあります。

    そのため、単に直流であるだけなく、変化が少なく、より品質のいい電気であることが求められます。重要なシステムのサーバールームのように、電気の厳密な品質管理が必要な場合は、手前にUPSを設置して、非常時の電源のバックアップに備えると共に、UPSを介して安定して変動のない高品質の直流電気を供給している、というわけです。

    今回は直流についてのお話でした。次回は交流について解説いたします。


    図版の出典:関西電気保安協会、TDK株式会社、日本電気技術者協会、ソーラー(太陽光)発電システムで売電エコ生活