エネマネことばの窓09~CCS-原油増産技術が14%CO2削減の期待を担う?~

エネルギーマネージメント「ことばの窓」

みかドン ミカどん今回のテーマはCCSです。CCSはCarbon dioxide Capture and Storageの略で、二酸化炭素(CO2)の回収と貯留を意味します。これは化石燃料の火力発電所や大規模な工場から排出される二酸化炭素を空気中に放出せずに、地底の奥深い頑丈な層に圧入させる技術です。(※このシリーズのすべての記事はこちらです)

二酸化炭素削減の期待を担うCCS

CCSの流れ

CSSの流れ(画像:資源エネルギー庁

二酸化炭素を地底の奥深くに圧入する研究開発が進んでいます。これは化石燃料の火力発電所や、製油所、化学プラントなどの大規模な工場から大量に排出されるガスの中から、二酸化炭素だけを取り出して圧縮し、地底の奥深くに貯留させる方式です。

Carbon dioxide Capture and Storageを略してCCSと呼ばれるこの方法は、どちらかといえば暫定措置の対症療法で、CO2排出量削減の抜本的な対策ではありません。コストも大きく、現在は一部を除き実証実験の段階です。

けれど、これという打開策が見えない現状では、物理的に隔離するこの方法が、一番確実で効果的という見方もあり、IEA(国際エネルギー機関)の報告書(IEA ETP 2017)によると、CCSは2060年までの累積CO2削減量の14%をCCSが担うことが期待されています。またIPCCでは「CCSの導入がなければ、2100年に温度上昇を2℃以内に抑えることは困難」であることが示唆されています。※IPCC=国連気候変動に関する政府間パネル=Intergovernmental Panel on Climate Change

元々は原油増量の技術だった

貯留という言葉を聞くと、私達はつい、空間のようなところにガスを貯めて、自由に取り出せるようなイメージを持ってしまいますが、どうやらCCSの場合は「貯留」というよりも、永久的な「封じ込め」と言ったほうが近いかもしれません。

封じ込める場所は、地下数キロにあるすき間の多い砂岩などの層で、CO2は岩石のすき間に貯められます。ただし砂岩層ならどこでもいいというわけではなく、その上部に水や気体を通さないキャップロックと言われる泥岩などの遮へい層が必要です。

二酸化炭素隔離貯留の概念図

二酸化炭素隔離貯留の概念図(画像:国立環境研究所

CCSの基本技術は今に始まったわけではなく、元々は原油を増量させる手段として40年以上も前から使われてきました。

石油増進回収イメージ掘り始め当初の油田は地下の圧力だけで原油が井戸から自噴して来ますが、採掘が進み原油の量が減ってくると圧力が下がり回収率が落ちます。そこで液体やガスなどを送り込み原油増産を図る方式がEOR(原油増進回収法=Enhanced Oil Recovery)という名称で1970年代に確率しました。

ここで使う液体やガスの代わりに二酸化炭素(CO2)を注入しても同じ効果が得られるため、米国ではCCSをEOR(原油増進回収法)として活用するケースがほとんどで、コストが回収できるビジネスとして成立している事例もあるそうです。

国別の人為起源CO2の圧入量を国別で比較すると、アメリカ、カナダ、ノルウェーの順となり、そのほとんどがEORによるものですが、ノルウェーの場合は1991年という早い時期に炭素税を導入したため、ノルウェーでは課税の負担を軽減する目的でCCSが導入されています。

日本では苫小牧で実証実験の圧入期間がもうすぐ終了

北海道・苫小牧市のCCS実証実験

北海道・苫小牧市のCCS実証実験(画像:資源エネルギー庁)

CCSは日本でも実証実験が行われています。日本の場合は油田がなくCCSと引き換えに得られるメリットがありません。また、CCSに適した地層も限られるため、沿岸部に集中している発電所や製油所、化学プラントの周辺がCCSに適さなければ、長いパイプランの敷設やCO2の輸送など、設置の面でもコストの面でも欧米以上にハードルが高いのが実情です。

しかしCCSを行わなければ、CO2の削減目標が達成できないという考えは世界の論調と一致しており、国からCCD実証試験に向けた調査・実証事業及び周辺事業を請け負う会社として日本CCS調査株式会社が2008年に設立されました。

日本CCS調査株式会社は電力、都市ガス、石油、 プラント設計・建設、 商社など34社が株主として出資する調査会社です。経済産業からの委託を受けて各地で実験的な試験を実施後、2016年から北海道の苫小牧で大規模な実証実験を開始しました。(2018年度=平成30年度からはNEDO事業)

苫小牧の大規模実証施設では出光石油の製油所から排出されたガスを分離・回収して地下約1000メートルの「萌別層」という地層と地下約3000メートルの「滝の上層」にCO2を圧入してきました。

そして今年の10月末までに圧入量が目標の30万トンに達する見通しになり、実証施設は役目を終えます。施設は分離・回収設備をそのまま流用できるカーボンリサイクル実証試験施設として活用する方針を、今年の8月22日に世耕弘成経済産業相が明らかにしたばかりです。

実証実験は2020年度の実用化を目指したものだったので、このニュースをどうとらえるべきか判断がつきませんが、後日、評価報告書などが発表されると思いますので、そちらにも目を通してみたいと思います。

CCSは地層的にも商業的(コスト的)にも、ハードルが高い日本ですが、ほかに地震との関連性なども取沙汰されており、CO2削減に即効性はあるものの、環境や人の暮らしや漁業への影響などはまだまだ未知数です。

短期的に有効と言われるCCSですが、あくまでも「つなぎ」の技術であり、CCSが橋渡しする次世代の技術の出現を待ちたいところです。

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