単位の歴史(06)~ヘクトパスカル。平成4年に切替わった3代目の大気圧単位~

    天気図_19102112

    大気圧の単位は1992年(平成4年)にヘクトパスカルへ

    上の画像はこの文章を書いている2019年(令和元年)10月21日12時の天気図です(気象庁より)。台風の気圧がhPa(ヘクトパスカル)で表されていますよね。ですが、昭和世代にはいまもmbar(ミリバール)と言われた方がなじみ深く、ニュースで天気予報を伝えるアナウンサーの声まで浮かんできそうな気がします。

    気象情報で使われる気圧の単位がミリバールからヘクトパスカルに変わったのは1992年(平成4年)12月1日からです。きっかけは同年5月に行われた計量法の全面改正で、それを機に国際単位のヘクトパスカルに統一することになりました。

    計量法は元々、国内の計量基準を定め、取引が統一基準の元で公正に行われることを目的としたものでしたが、制定されたのが1951年(昭和26年)で実情に合わなくなってきていたため、国際基準に統一することなどを主眼に大きく改正されました。

    日本の気象分野では古くは水銀柱ミリメートル(mmHg)が使われていましが、1945年からミリバール(mbar)に切替えられ、更に1992年12月にヘクトパスカル (hPa)に切替えられたため、単位としては三代目ということになります。

    ヘクトという語句は100倍を表す接頭語で、ha(ヘクタール)のヘクトと同じ意味ですが、ミリやキロのように通常は103(千単位)で変化するはずの接頭語がキロではなくヘクトになったのは、気象関係者がヘクトパスカルを要望したからだそうです。

    実はヘクトパスカル=ミリバールなので単位が変わっても数字の値はそのまま使えるため、ヘクトのほうが便利だったのだと思われますが、海外の天気図でもhPaが使われているので、ヘクトを主張したのは世界中の専門家達だったのかもしれませんね。

    パスカルの功績をたたえて1971年に制定

    Blaise_pascalさてヘクトパスカルのパスカルは「人間は考える葦である」といったあのパスカル(1623~1662、フランス)です。人の名前から名づけられているのでPaのPは大文字です。

    パスカルは流体における圧力の伝わり方に関する基本原理である「パスカルの原理」を発見し、これが現在の化学や物理の基礎となりました。この圧力に関するパスカルの功績をたたえ、1971年に国際単位系で「Pa(パスカル)」という圧力の単位が正式に採用されたのです。

    パスカルは幼いころから驚異的な才能を持っていた早熟の天才ですが、体が弱く39歳で亡くなりました。標高によって水銀柱の高さが変わることを確かめたのも、実際に山に登って実験をしたのは、体が弱く登山できないパスカルに依頼された義兄だったとか。

    数学者であり物理学者であり、哲学者で神学者でもあったパスカルは短い生涯の中で多くの科学的な業績と著書を残していますが、その分野もまた多分野に及びました。

    日本ではタイヤ等の空気圧を表す単位も、1999年の新計量法によってkgf/cm²からkPa(キロパスカル)に変わりました。いま、中学生や高校生の子供を持つお父さんやお母さんがお子さんの教科書を開くとPa(パスカル)やN(ニュートン)など、耳慣れない単位が普通に使われていてびっくりするそうです。

    ちなみにアメリカではいまもミリバールが使われていますが(2019時点)そればかりでなく、気温は「℉(華氏)」、長さは「f(フィート)」や「マイル(ml)」など国際単位系を全く気にしていない独自の単位系を使い続けているのは、アメリカらしいと言えばアメリカらしいですね。