単位の歴史(10)~日本よりも米国で有名な竜巻博士の藤田スケール~

日本よりも海外で有名な気象学者

気象分野でノーベル賞があったら、間違いなく受賞していただろうと言われる日本人の気象学者がいます。名前は藤田哲也博士(1920-1998)。

藤田博士は1953年にシカゴ大学の教授に招聘されて渡米し同大学の気象学客員研究員になりました。やがて教授の勧めで本格的に竜巻の研究を始め、1971年に竜巻の規模を示す藤田スケールを考案しました。

アメリカにはそれまで、竜巻の発生回数は記録されていたものの、規模などは記録されていませんでした。そこでミズーリ州カンザスシティの気象予報センター長であったアレン・ピアソンと共に、被害状況から竜巻の最大風速を推定する方法を編み出し、Fujita-Pearson Tornado Scale(通称F-Scaleまたは藤田スケール」と呼ばれて、1973年に国立気象局で採用され、現在では国際的な基準として広く用いられています。

藤田スケールは実測する手段のない竜巻という自然現象にランクをつけたもので、地震の震度に相当します。そして、他の研究も含め、後年は気象学界のノーベル賞と呼ばれるフランス国立航空宇宙アカデミー賞・金メダルを受賞し、日本よりも海外で知られた存在となりました。

藤田スケール

F0 太い木の枝が折れる、道路標識が傾くなど(32m/s未満)
F1 屋根がはがれる、走行中の車が制御不能になるなど(33~49m/s)
F2 軽自動車・普通車が横転する、大木が根元から折れるなど(50~69m/s)
F3 住宅を破壊、大型トラックが浮く、列車が脱線転覆するなど(70~92m/s)
F4 住宅・車が空を飛ぶなど、かなり深刻な被害が出る(93~116m/s)
F5 地上にあるもの全てが破壊されるなど、壊滅的な被害が出る(117~141m/s)
F6 1999年オクラホマで最大風速142m/s(非公式)を観測(142~169m/s)

これにより、アメリカ合衆国では1973年以降、竜巻の発生直後にその強さが評定されるようになりました。ちなみに日本ではこれまでF4以上の竜巻は観測されていないそうです。

気象界のディズニーとも呼ばれた藤田博士

Thetsuya_Theodore_Fijuta

(画像:Wikipedia

藤田博士は徹底したデータ収集と観察重視の研究者でした。規模の大きい竜巻は発生頻度が少なく、しかも人口の少ない地域で起こることが多いため、研究に必要な情報がなかなか集まりません。

そこで藤田博士が取った行動は、ラジオを通じて情報提供を呼び掛けるというユニークな物でした。そのお陰で少しずつ写真や目撃情報が集まるようになり、被害状況の分析が進んで内容が体系化していきました。

ですが博士のユニークなところはそれだけではありません。それらのデータを難しい数式や難解な論文ではなく、見やすい立体図などの図解にしてしまうことから注目を集め、気象界のディズニーと呼ばれることもあったそうです。

渡米後、藤田博士は名前にミドルネームを追加し、藤田テッド哲也と名乗るようになりました。FUJITAのようにAで終わる名前は、スペイン語圏では女性の名前に多いため「Ms.TETSUYA」という女性用の宛名で手紙が来ることがあり、それでミドルネームを付けたというスピーチで場内を沸かせている録音が残っています。研究手法だけでなく、人柄としても話し上手で洒脱な人物だったようです。

航空機墜落の真相を突き止める

博士は竜巻だけではなく局地的に起こる急激な下降噴流の研究家としても著名です。

きっかけは1975年にジョン・F・ケネディ国際空港で起こったイースタンエアライン66便の墜落事故ですが、管制塔では当時、飛行機を墜落させるほどの突風は観測されておらず、事故調査委員会はこの事故をパイロットのミスと結論付けました。

しかし、それに納得のいかなかった航空会社に事故原因の再調査を依頼されたことで、藤田博士は調査委を開始し、空港付近でごく短い時間に強い下降気流が発生したことを突き止めたのです。

博士はこれをダウンバーストと名付け、旅客機の墜落はこのダウンバースト(下降噴流)に起因すると指摘しました。

ダウンバーストの存在についてはその後しばらく論争が続いていましたが、1983年、レーガン大統領の専用機エアフォースワンが着陸した6分後にダウンバーストが発生し、格納庫が破壊された事故により、ダウンバースト論の正当性が認められました。

藤田博士はその優れた業績から、世界中で、「ミスタートルネード」「竜巻博士」(Dr. Tornado)などと呼ばれ、1998年に亡くなった際には「竜巻博士」を悼む声が次々に寄せられたそうです。博士はアメリカ市民権を獲得した方ですが、今はふるさと北九州市のお寺に眠っています。

藤田スケールは博士の死後、何度か改良されましたが、藤田スケールの名前は変わることなく今も使われ続けています。


出典:
ブレイブ 勇敢なる者「Mr.トルネード~気象学で世界を救った男~」 藤田スケール – Wikipedia 藤田哲也 (気象学者) など

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