エネマネことばの窓18 ~CSRは「to do」サステナビリティは「to be」~

    エネルギーマネージメント「ことばの窓」

    みかドン ミカどんCSRという言葉がようやく浸透してきたと思っていた矢先に、サステナビリティという言葉が現れて、段々よくわからなくなってきました。今回はCSRについてもう一度意味を見直し、サステナビリティとの違いについても少し触れてみます。

    CSRとは_3611640_m

    CSRっていったいなに?慈善事業とは異なるものです

    CSRとは、Corporate Social Responsibilityの略です。直訳すると、Corporate=法人の、Social=社会的な、Responsibility=責任 ということで、日本語ではそのまま「企業の社会的責任」と訳されています。

    CSRは「民間企業が利益だけを優先するのではなく、幅広いステークホルダーを重視しながら社会に貢献する」ことを指すものなので、発展途上国の国に学校を建てたり、農業の指導や食糧支援をすることもCSR活動ですし、学習や教育を事業としている会社が教育関係の慈善事業を行ったり、民間企業が美術館を持って芸術文化を支援することもわかりやすいCSR活動です。

    けれど、ここで言われるステークホルダーというのは「すべての利害関係者」を意味する言葉です。つまりステークホルダーとは、お客様、従業員、株主、債権者、仕入先、得意先、地域社会、行政機関など、企業活動を行う上で関わるすべての人のことを指し示しているため、仕入れ先に対する公正で適正な取引もCSRの一環ですし、コーポレートガバナンスや法令順守、そして従業員に対する人権・労働問題の防止もCSRに含まれます。

    また「責任」という言葉にも多少の誤解があります。日本語で「責任」と対訳されるResponsibilityという単語は、response(反応、対応)とability(力、能力)から成り立っており、問われているのは責任能力ではなく対応力なのです。

    CSRでの社会的責任は、企業がステークホルダーからのさまざまなニーズや要求に柔軟に対応し、適切な意思決定をして実践する責任のことをいいます。そのためCSRへの取り組みは時代や社会環境によっても変化していきます。CSRは単に「慈善活動」を示すものではなく、企業として様々な人たちの要求に応えることで実現する社会貢献といえるでしょう。中でも近年は、環境対策への比重がとても大きくなってきていることは言うまでもありません。

    CSRはto do(やるべきこと)サステナビリティはto be(あるべき姿)

    サステナビリティとCSR_3593254_m

    最近、英語圏の国々では、CSRに代わってコーポレートサステナビリティという言葉がよく使われているようです。サステナビリティはいまやSDGsでもすっかりおなじみの「持続可能な」という意味ですが、日本にはあとから入ってきた「サステナビリティ」の概念によって、CSRの目的がより明確になったのではないでしょうか。

    CSRはどちらかというといくつかのガイドラインやコードが決まっていて、それが守られているかどうかという観点が中心でした。それに対してサステナビリティはより広い観点で「安定しているか」「持続可能かどうか」という視点が求められています。

    例えばブラック企業と呼ばれ過労で亡くなる人がいるような場合は、働き方に無理があり、会社にとっても社員にとっても決して持続可能とは言えません。取引先への無理なコストの押し付けや発注後の頻繁な仕様変更なども然りです。

    一方、地球全体に目を向けると、温暖化などの環境対策にとどまらず、持続可能な社会のためにはSDGsの17目標に掲げられるような課題が山積しています。近年のCSRはそのために何をするか(手段、to do)という考えに集約されつつあり、サステナビリティはCSRを実践することで実現するゴール(あるべき姿、to be)と捉えるとわかりやすいのではないでしょうか。

    グローバルな視点に立てば、環境への直接的な対策のみならず、資材や原材料の調達が途上国側の自然破壊や環境汚染につながっていないことや、人権を無視するような労働条件や労働環境によって実現された低コストでないということ等を先進国企業側が保証することもCSRです。サプライチェーンのどこかに無理や無駄がある場合は決して安定した調達と言えず、やがて「持続可能な経営」に影響を及ぼす場合もあるからです。

    このように企業の長期的な存続とCSR、サステナブルは密接に関わりあっています。

    CSRへの具体的な取り組みテーマ

    ISO26000_dsr-no57-02
    (出典:経済産業省の資料を基にあらた監査法人が作成した図表)

    時代の趨勢(すうせい)とともに「社会貢献」の内容は変化しますが、CSRの国際規格であるISO26000では、「貢献」を考えるヒントになりうる以下7つの原則を挙げています。

    「組織統治」「人権」「労働慣行」「公正な事業慣行」「消費者課題」「環境」「コミュニティーへの参画/コミュニティーの発展」

    これはISOによくある認証規格ではなく、任意にステークホルダーを重視することで効果的に社会的責任を組織全体に統合するためのガイダンス規格となっています。

    企業が社会的責任を果たすことは、広く社会からの信頼を得ることにつながります。
    CSRがもたらす主なメリットは、以下のような点です。

    • 不正な行為・違法活動を排除することで、事業継続のリスクを回避する。
    • 企業評価・企業イメージ・知名度・ブランド価値の向上。
    • 従業員のモチベーションアップ、帰属意識の向上、採用活動の円滑化、労務環境の向上。
    • ステークホルダーとの関係向上。
    • 円滑な資金調達、販路拡大など販売力の向上、安定した資材調達。

    これらを元に各社がCSR委員会などを設け、その会社にふさわしいCSR活動を独自に策定していくのがスタート地点になりますが、CSRについて色々調べていたところ、思わず「あるある」と頷いてしまいそうな記事を見つけました。「教えて!アミタさん」に掲載されていた「CSR部の本当の役割」というその記事から「目の前の業務に追われてしまうCSR部の例とあるべき姿」最後にご紹介(引用)して今回は終わりにしたいと思います。

    目の前の業務に追われてしまうCSR部の例

    • CSR報告書の編集部になってしまっている
    • 報告書に載せるための活動を行って一年が終わってしまっている
    • 自社の環境管理のみを行っている
    • 社会貢献活動やイベントの実施に関する業務に振り回されている
    • 外から難題(実は大切な社会課題)を持ってくる「意識高い系」部署と煙たがられている

    ▼あるべきCSR部の姿

    • 環境や社会の課題、それに対する世界の動きを正確に把握するアンテナとなっている
    • 自社が10年後、20年後に持続可能であるために何をすべきかを考え、経営に提案する頭脳になっている。
    • 行政やNGOなどの外部ステークホルダーと対話や情報交換をする窓口になっている
    • 自社のあるべき姿を第三者の視点から考え、社内に提言している
    • 自社をサステナブルにするために、どの部署がどう動けばいいかを考えている、あるいは各部署が自主的に動くような機会や仕組みを作っている

    (出典:教えて!アミタさん