ミカドサイエンス&テクノロジー講座(14)~自制心にびっくり!イカは目の前のエサを”我慢”できる高知能な生き物でした!~

みかドン ミカどん

9月2日、近海スルメイカ113トンが八戸港に今季初水揚げされました。八戸港はイカの水揚げが日本一ですが、春夏は北太平洋で漁を行うため近海ものはこれからが本番です。さてそのイカ君ですが実は犬並みに頭がいいって知ってました?この春発表された研究によるとなんと「自制心」まであるようなんです!

マシュマロテスト(実験)をご存じですか?

(画像:カラパイア

皆さんはマシュマロテスト(実験)をご存じですか?スタンフォード大学の心理学者が50~60年前に行ったもので、子供にマシュマロをあげて「15分食べるのを我慢できたらもう1個あげる」と告げて大人が部屋を去り、子供をしばらくの間たった一人にする実験です。

(参考動画:日本語字幕)『ホアキム・デ・ポサダの、マシュマロはまだ食べちゃダメ!』(TED)

当時の実験では、15分間我慢できた子供は全体の3分の1でした。そしてその後の追跡調査によってその子供たちは大学進学適性試験の点数が高く社会的にも成功しているということがわかりました。

現在では別の学者のより詳しい再現実験により、社会的成功に関連性があるのは自制心ではなく子供たちの経済的背景(豊かなほうが成功しやすい)だったと言われていますが、もしおなかがペコペコのとき目の前にごちそうを出されたら、大人だって15分待てないかもしれませんよね。

ところがこの、目の前の甘い誘惑を我慢してより大きな報酬を得るための自制心がイカに備わっていることがわかったのです。

イカが自制心を発揮してマシュマロテストをクリア!

2種類の餌のうち好物の生きたグラスシュリンプのほうに触腕を伸ばすコウイカ(画像:Twitter

この研究成果を発表したのは英ケンブリッジ大学と米ウッズホール海洋生物研究所(MBL)の共同研究チームです。

イカが最初にキングエビを食べてしまうと、このあと仕切りが開くはずの好物の生きたグラスシュリンプは取り除かれます(画像:oceanbites

実験では好物の生きたグラスシュリンプと、キングエビのかけらを使い、実験用に飼っているコウイカがキングエビのかけらを食べずに我慢すれば、数十秒後に好物の生きたグラスシュリンプが食べられる装置を水槽内につくりました。

そしてその事実をイカに覚えさせると、なんとイカは目の前のキングエビのかけらを我慢するようになったとのことです。

この研究は今年(2021年)の3月に英国王立協会で発表され、マシュマロテストのイカバージョンとして関心を呼び「学習能力と自制心が、霊長類以外で確認されるのは初めてだ」と世界中の話題になりました。

研究論文によると、「6匹すべてがキングエビを無視し、50秒以上、グラスシュリンプを待った。なかには、最長130秒間、辛抱するものもいた」そうです。

実は犬並みの知能を持つイカ

実はイカは想像以上に頭がよく、犬並みの知能を持つことがわかりました。昨年発表されたオーストラリアのチームによる研究では、イカのニューロン(神経細胞)は5億個以上もあり、それは犬とほぼ同等だそうです。

ちなみに同チームの研究者によれば「ネズミは2億個、正常な軟体動物は2万個程度なので、イカはそれらをはるかに凌駕する」らしく、ほかにも「イカは数を認識する」「鏡に映った自分が自分自身であることを理解している」などの研究成果が複数の研究者によって発表されています。

マシュマロテストと同じ主旨で実験を行って自制心が確認されたのは、チンパンジーなどの霊長類のほかに、カラスやオウムなどがいるそうです。社会生活を営む上で衝動心を抑えられるほうが無駄な争いを避けて長生きできる哺乳類や鳥類と異なり、1~数年で寿命を終える短命のイカになぜ自制心があるのかは謎です。

しかし実験で使われたコウイカは擬態の天才であり、瞬時に体表面の色や模様を変化させてあっという間に周囲の景色とよく似た外見に変化します(動画参照。つまり目が良く識別能力もある)。

コウイカは多くの時間を擬態して過ごしますが、採餌の瞬間だけ擬態が中断してしまうため、ショボい獲物に対して頻繁に正体をバラしていては、一番食べたい獲物に逃げられてしまう可能性もありますよね。

今回の研究論文の筆頭著者でケンブリッジ大学のアレクサンドラ・シュネル博士は「よりよい獲物を待って選び、採餌を最適化させるうちに、自制心が進化してきたのではないか」と考察しています。

あのイカがそれほど頭のいい生き物だったとは驚きです!私も夏の夕暮れにビールを我慢する自制心があれば、もっとお腹もへこんでいたのかも?と思う今日この頃です。

(ミカドONLINE編集部)


出典/参考記事:「イカには自制心が備わっている」との研究結果 イカの脳は犬の脳と匹敵することが明らかに。さらに、デザートのために食事をセーブする自制心も など

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