ミカドサイエンス&テクノロジー講座(20)~知ってる?田んぼには発電菌がいるんだって!近所の土でも電気が起こせるの??~

みかドン ミカどん

皆さんは「発電菌」を知っていますか?今から30年前に発見された発電能力を持つ微生物のことです。発電菌は私たちの身近な泥の中にも存在しています。今回は発電菌を使って田んぼで電気を起こす微生物発電のご紹介です。

田んぼで発電する研究がただいま各地で進行中

東京薬科大学で田んぼで発電を行う実験が進められています。21世紀になって発電能力を持つ有益な微生物が発見され、それは私たちの身近な泥の中にも存在することがわかったのです。

そこで同大学の生命エネルギー工学研究室(渡邉一哉教授)では、発電菌を利用して汚水を浄化しながら発電する装置を世界に先駆けて開発し、土の中の発電菌を使い田んぼで発電することにも成功しました。

発電する微生物の存在はイギリスの研究者が100年前に確認しています。しかし発電量がごく微量であることや、生物学的に不明な点が多かったため、それまではあまり注目されていませんでした。

状況が変わるきっかけとなったのは、1988年にアメリカで発見されたシュワネラ菌です。現代の技術によってこの菌が電子を体外に放出することが科学的に解明され、実用化のための研究が一気に加速し始めました。(現在は別の発電菌も見つかっています)

「田んぼで行う微生物発電」はSDGsの追い風を受けて年々注目度が上がり、今では佐賀大学(2013年研究開始)や鳥取市(2021実証実験開始)など各地でも研究や実験が進められ、マスコミの報道で目にする機会も増えています。

余談ですが、東京薬科大の「田んぼ発電(千葉県野田市)」は、2021年6月20日に放送された『ナニコレ珍百景』でも取り上げられ、めでたく?珍百景に認定されたそうです。

田んぼの微生物発電のしくみ

では、「微生物が発電する」とはどういうことなのでしょうか。今さかんに研究されているシュワネラ菌は、なんとエサの有機物を食べて電子を体外に放出する特性を持っているのです。

田んぼの場合はイネが光合成によって有機物※を作り、その一部を根から土の中に出しています。その有機物をエサにして生きている微生物の一群の中に発電菌と呼ばれるシュワネラ菌もいるそうです。

電極に集まって来たシュワネラ菌を解説する渡邊教授(日本科学未来館YouTubeより)

シュワネラ菌が生きていくためには、体内から出た電子をどこかの金属に手渡さなくてはなりません。

そこで電極を田んぼの中に設置するとシュワネラ菌が電極の周りに集まってくるそうです。

電子が流れるとそこにはエネルギーが発生します。こうやって発電するのが田んぼの微生物発電なのです。

シュワネラ菌は元々海底火山付近で発見された菌でした。付近の海底には酸化鉄や硫化鉄が豊富に含まれています。そのシュワネラ菌が水田や生活圏の泥の中で、普段はどうやって生きているのか謎ですが、これらの発電菌を使えば汚泥から電気を起こしたり、泥を使った燃料電池なども可能になるわけです。

そのため、排水/廃水処理の分野では大学のほか民間企業も研究に参加しています。そしてなんと学習教材の分野ではすでに微生物発電が実用化されているのです!

※有機物とは・・・
炭素と酸素からなる化合物。一般的には生物の体内で作られる炭水化物、脂肪、タンパク質などを指すことが多いですが、人工的に合成された有機化合物もあります。

微生物発電は学習キットとしてすでに実用化されています

この写真はAmazonで販売されている微生物発電実験キットです。商品名はマッドワット(MudWatt)と言い、米国のベンチャーが開発した学習教材です。

実際に購入して発電してみた方のブログなどもあるので、一例として以下をお読みいただければ雰囲気がわかると思います。

🌍【光った!】MudWatt(微生物燃料電池キット)をAmazonで買ってみた!

マッドワット(MudWatt)は研究者も試用(画像:EMIRA

このブログ主さんは、培地などを工夫しつつエサとして砂糖を与えたそうですが、動作するまでには時間がかかるとのこと。ネット上では堆肥をやった人やケチャップで成功した人もいる反面、反応がなかったという方もいらっしゃるようです。

マッドワット(MudWatt)はスマホで発電量を計測することも可能なので、科学好きな親子には好評のようです。

🌍 4日目でLED点灯!!!

新たな持続可能なエネルギーとして

佐賀大学の泥電池の実験(画像:リケラボ

さて、発電のための材料を外から継ぎ足して電気を起こす電池を燃料電池と言いますが、泥を使った微生物発電は「田んぼ発電」だけでなく微生物燃料電池や浄化と同時に発電をする汚泥処理など、様々な分野で有望視されています。

ちなみに100ml(コップ約半分)の培地で発電できる電気は0.3W程度で、これは実用化されている燃料電池の10~100分の1の発電効率ですが、携帯音楽プレーヤーで音楽が聴けるレベルと聞けば、それほど低いものではないかもしれません。

また、理論上、田んぼ発電の場合は田んぼ1反に対し10世帯分の電力を確保できる可能性がある(鳥取発技術「微生物発電」実証プロジェクト)そうです。

私たちが自然エネルギーと聞いて想像するのは太陽光発電や風力発電ですが、田んぼや身近な泥(正確には土中の発電菌)にエサを与えて発電できるのなら、これこそまさに持続可能な自然エネルギーですよね。

今のところ発電効率は決して高くはありませんが、微量を日々蓄電池に溜めて緊急時に備えることもできますし、将来的には革新的な技術が見つかるかもしれません。

田んぼ発電もその他の微生物発電も、現在は発電効率のいい電極の開発や効果的なシステムの確立を目指し、複数の大学や研究機関や民間企業が今まで以上に本腰を入れて研究開発を進めているようです。

(ミカドONLINE編集部)


出典/参考記事: 渡邉 一哉教授|研究室・教員一覧|東京薬科大学:生命科学部 見えてきた微生物燃料電池の実用化。 発電と環境浄化が同時にできる「泥の電池」冨永昌人教授佐賀大学 | リケラボ 半永久的に持続する電源!?細菌が起こす発電イノベーション | EMIRA 自然に近づいていく新たなサイエンスの礎(PDF) 発電に微生物の力 燃料電池が実用レベルうかがう:日本経済新聞 24時間 田んぼで「微生物発電」 電気の“地産地消”めざす再生可能エネルギーに新たな可能性【鳥取発】 鳥取:自然に優しい 微生物発電:地域ニュース : 読売新聞オンライン テレビ朝日系『ナニコレ珍百景』で生命科学部 生命エネルギー工学研究室が取り組む「田んぼ発電」が珍百景に認定されました|生命科学部:ニュース&トピックス – 2021年度|東京薬科大学 田んぼ発電 微生物のエネルギーを利用せよ | nippon.com 微生物と燃料電池 | 株式会社エコニクス | エコニュース    など

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