驚異のエネマネ新技術(19) ~衝撃や振動で電気が光る振動発電~

    みかドン ミカどん日本や世界のエネルギーマネジメントに関する新しい技術をご紹介するコーナーです。前回は野外に設置した棒状の柱が風で揺れて発電する”羽のない風力発電”をご紹介しました。当社の会長からは「今後普及して川べりに密集したらムーミンのニョロニョロのように見えるのでは?」というコメントもいただきました(笑)。今回は続編として、前回掲載できなかった日本の小さな振動発電についてお伝えします。

    衝撃を光に変える電池の要らない振動発電

    上の動画を再生して見てください。ポールを叩いた衝撃によって発電した電気が、少し離れたデバイスに無線で送られてライトを光らせています。
    これは金沢大学の上野敏幸准教授が開発した振動発電デバイス「V-GENERATOR」をつかった活用例のひとつです。

    この装置は事故などの衝突の通知、LEDライト点灯による夜間歩行の安全・安心を目的に開発したもので、防犯・防災やボールの衝突判定のほかにも、靴や杖に取り付けたり、何かのカウントや楽器を演奏で光らせるなど、様々な応用が可能です。しかも、電池が要りません。

    上野准教授が開発した「V-GENERATOR」はシンプルで簡単に組み立てられる高出力な振動発電デバイスです。
    その構造はとてもシンプルで、U字型のフレームに板状の鉄ガリウム合金を貼り付けてコイルを巻き、中央に永久磁石が配置されています。
    この先端におもりを取り付け機械などの振動源に固定すると、おもりの振動で磁束が変化し、コイルに起電力が発生します。

    この装置のポイントは、磁歪(じわい)材料と呼ばれる合金素材です。近年、伸び縮みした際に磁力を変化させ、効率よく電気を発生させる合金の開発が進んだことで、小さなデバイスの小さな振動でもLEDライトを点灯させるだけの電気を起こすことが可能になりました。
    ただし、この磁歪材料の価格が実用化のネックにもなっており、量産による価格の低下が望まれるところです。

    上野准教授の県中チームでは、V-GENERATORの特徴を以下の5点にまとめ、IoTと組み合わせた様々な警報やメンテナンス分野での実用化を目指しています。

    V-GENERATORの5つの特徴

    • 01.シンプルで製造も容易、高い耐久性
      従来技術で製造可能。劣化の要因になる摺動部がない。
    • 02.高出力・高感度
      U字フレームをベースにした画期的な構造で、小さな力で磁化を大きく変化させる。
    • 03.よい電源特性(低出力抵抗)
      電流を取り出しやすい。コイルの仕様で電圧・抵抗が調整可能。
    • 04.高いサイズ,形状自由度
      基本原理を守れば、様々なサイズ・構造にカスタマイズ可能。
    • 05.低コスト
      価格はFe-Ga合金に依存、それ以外はモータに利用される部品。

    駐車場で実用化された自動車振動発電

    一方、昨年沖縄のショッピングモールの駐車場で実際に導入された振動発電は、自動車が通過する振動で一時停止線のライトを点灯させ、ドライバーに注意喚起を促すものです。
    この振動発電ユニットは、竹中工務店がセイリツ工業、湘南メタルテックと共同開発したもので、2019年6月にオープンした「サンエー浦添西海岸 PARCO CITY」(沖縄県浦添市)の屋内駐車場で初めて導入されました。

    竹中工務店の振動ユニットは、自動車が通過するときの振動エネルギーを直接発電機に伝達して、高い発電力を生み出す点に特徴があります。
    この分野では、歩行者や空調ダクトが発生する微振動、自動車や鉄道の走行に伴う縦揺れなどの間接的な振動エネルギーを活用した発電技術がすでにありますが、いずれも発電量が小さいため用途が限られていました。
    けれどこのユニットでは今までと異なり、振動エネルギーを直接発電機に伝達することで高出力の発電が可能となったものです。

    ”高出力”といっても、ライトを点けるに値する電力という意味ですが、従来はそこまで至らなかったためこのケースは注目され、今後は照明以外にも様々な用途で利用が広がる可能性も出てきました。
    また将来的には、交通量の多い場所に設置して連続発電で蓄電し、交通量の少ない時間帯に放電するなど、エネルギーを有効利用することもできそうです。

    道路や公園や工事現場などでは、小さな太陽光パネルや小さな風車を取り付けた照明を日常的に目にするようになりました。
    現在は振動発電も世界中で研究と開発が進んでいます。やがて振動照明が安価になって普及すれば、それも当たり前の景色になっていくのでしょうか。
    ただし、振動発電はユニットが人目に触れにくいので、実際に普及しても、あまり気が付かないかもしれませんね。

     

     

    (ミカドONLINE編集部)


    出典/参考記事: 振動発電でIoTを加速する | V-GENERATOR 金沢大学 振動発電研究室  車両走行可能な高出力振動発電ユニットを開発、竹中工務店 – BUILT など