驚異のエネマネ新技術⑳ ~「太陽”熱”発電」太陽の恩恵は光だけじゃない~

みかドン ミカどん日本や世界のエネルギーマネジメントに関する新しい技術やニュースをご紹介するコーナーです。さて、太陽エネルギーの活用と言えば、誰もが太陽光発電を思い浮かべると思いますが、世界では太陽の熱をつかった太陽熱発電の建設も進められています。今回はそちらをご紹介いたします。

広大な敷地に配置した無数のパネルで集光する集光型太陽熱発電

上の動画(英語)は現在ドバイに建設中の太陽熱発電所の完成イメージを解説したものです。この発電所は集光型太陽熱発電(CSP=concentrating solar power generation)と呼ばれる方式で、ミラーで反射させた太陽の光を中心のタワー先端に集め、その高熱による蒸気でタービンを回します。

タービンを回すため発電自体は火力発電と同じしくみですが、燃料を一切必要としないばかりでなく、エネルギー変換効率が高く、しかも熱慣性(物質の熱しにくく冷めにくい性質)や蒸気タービンなどによる機械的な慣性力によって発電量が平滑化するため、太陽光発電と比較して、天候の急激な変化や日没による影響を受けにくいなどの特長があります。

しかし難点として、年間を通して強い日差しが照り付ける広大な土地が必要なため、国土が狭く意外に晴天も少ない日本には向かず、残念ながら国内では実用化されていません。
一方、日射量の多いアフリカ北部、中東、アメリカ合衆国南西部、そしてオーストラリアなどの乾燥地帯は、システムに大敵の湿気や砂嵐なども少なく、大規模なプラントが稼働しています。

発電所としての太陽熱発電の最大の利点は、コストパフォーマンスです。太陽光発電は半導体に光を当てると電流が発生する性質を活かしたものですが、高性能な太陽光パネルやパワーコンディショナー(場合により大容量蓄電池)等を使用するため導入コストが高くなる上、実用化されている太陽光パネルのエネルギー効率は20%程度といわれています。

一方、太陽熱発電は導入コストが安いだけでなく、エネルギー効率は海外の平均的なレベルで約3~30%なので、システム次第では費用対効果の高い発電方法ということになります。

集光方法は4種類。高効率のタワー型はミラーが太陽を追尾する

集光型太陽熱発電には4つのタイプがあり先にご紹介したドバイの発電所はタワー型の発電所です。タワー型ではヘリオスタットと呼ばれる太陽追尾型の集光ミラーが常にベストな角度を自動調整しながらタワーの先端のレシーバーに光を集めます。上の動画は米国ネバダ州のCrescent Dunes太陽熱発電所のものですが、再生ボタンを押すとヘリオスタットが動く様子が見られます。(ヘリオスタットの部分から再生が始まるように設定)

タワー型の場合は熱媒として水/水蒸気や硝酸塩系溶融塩がつかわれます。タワーの先端で高温に熱せられた熱媒が地上に熱を運び、その熱で生成された蒸気がタービンを回して発電します。

ほかの方式の集光型太陽熱発電(CSP)としては、パラボリックトラフ型、リニア・フレネル型、ディッシュ型があります。

それぞれに線で集光するのか、点で集光するのかの違いや、熱媒の違い、効率、コストなどで一長一短がありますが、まとめると以下になります。現時点ではパラボリックトラフ型が低コストで一番普及しており技術的にも安定していますが、高温が得られず発電効率が悪いため今後の主流はタワー型に移行していくと思われます。

・パラボリックトラフ型 : 製造コストが低いが、発電効率が悪い。
・リニア・フレネル型 : 設置場所が狭くても導入可能であるが、製造コストが高い。
・タワー型 : 発電効率が高いが、高度な技術と高いランニングコストを要する。
・ディッシュ型 : 形状がシンプルで製造コストが低いが、発電量が小さい。

ポテンシャルが大きいタワー型太陽熱発電

ネバダ州のCrescent Dunes太陽熱発電所は出力110メガワットのプラントとして2015年9月から稼働を開始し、25年契約を結んだネバダパワーに1キロワット時あたり0.135ドル(約13円)で売却される予定でしたが、その後技術的なトラブルが発生して稼働率が目標値に遠く及ばず(2018年には約20%の稼働率)、訴訟や所有権の変更などを経て昨年(2019年)操業を停止しました。

まだまだ課題のあるタワー型太陽熱発電ですが、蓄電池よりもコストが低い蓄熱システムとの併用により24時間の発電が可能になったことや、ボイラも標準装備されるため長期間日射が無い場合にもバックアップ発電所が不要という点で太陽光発電よりも優位性があります。

日本のCSP実証実験

(画像:終了報告書

太陽光発電のコストの急落により一時は建設が鈍化した太陽熱発電ですが、近年コストパフォーマンスが見直され、世界的には再び増加傾向にあります。

日本でも数年前に三菱日立パワーシステムズにより実証実験が行われましたが、その後の続報がなく結果は終了報告書を読み込むしかありませんが、イタリアやスペインなどの太陽熱発電設備には日本企業の製品が数多く使用されており、今後技術の向上により状況が変わっていくのかもしれません。実証実験の終了報告書には「太陽光に比べて太陽熱は建設コストが高いのが課題」という記述があり意外に感じましたが、現実は一般論とは異なるのかもしれません。

➡ 集光型太陽熱発電の実証プラント稼働、世界初のハイブリッド型(2016.08.17)
終了報告書

さて最初にご紹介したドバイの太陽熱発電所は2021年4月までに200メガワットの発電を目指すそうです。それを第一段階として最終的には、2030年までに1000メガワット級の太陽熱発電所を建設する計画が2016年に発表されています。原油が豊富な隣のアブダビ首長国と異なり、ドバイ首長国の原油埋蔵量は減少しており、ドバイは経済の多様化を目指しているようです。

太陽光発電や風力発電と異なり、海外の砂漠地帯に行かなければ実際に目にすることができない太陽熱発電ですが、飛行機から眺めるプラントは湖のようで美しいという人もいます。YouTubeで「concentrating solar power generation」や「Solar Thermal Power」などで検索すると海外の動画がたくさん出てきますので、興味のある方はご覧になってみてください。

(ミカドONLINE編集部)


出典/参考記事: ドバイ、1000メガワットの太陽熱発電所を建設へ  砂漠が変える世界の電力不足:サハラ砂漠でのソーラー発電  NEDO再生可能エネルギー技術白書  研究開発の俯瞰報告書(環境エネルギー分野2019年)など

♠この記事をお読みになっていかがでしたか?(複数可)
面白かった参考になった仕事に役立つ普通期待したものと違った面白くなかった

ニックネーム(任意)

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする