エネマネ最新事情(24) ~ホンダがEV発売、F1撤退。何が何でもEVを作らなければならなかったCAFE規制ってなに?~

みかドン ミカどん10月30日からホンダの新型コンパクトEV「ホンダ e(イー)」が国内販売を開始しました。同じ10月にホンダはF1からの撤退を発表しました。今回はホンダのニュースを通してエネルギーマネジメントの視点から世界の自動車事情をお伝えします。

「ホンダ e」は航続距離より”魅力”にフォーカスしたタウンEV

上がこの秋に発売されたホンダの新型コンパクトEV「ホンダ e」です。後輪駆動でシビックへのオマージュを感じさせる独特のデザインを持つこの新型EVは発想もオリジナル。小さくて都市部で使いやすく環境にも優しい”街なかベスト”をコンセプトに航続距離では勝負せず、先進的な装備と機能に的を絞ったEVです。

気になるお値段は451万円(上級クラスのアドバンスは495万円)!定員が4名なのに全幅がジャスト1750mmで3ナンバーになってしまうなど、「お値段も大きさも、ちっとも”コンパクト”じゃない」というご意見もネット上にはあるようです。

航続距離は「e」が308Km(JC08モード)で「アドバンス」が274Km(JC08モード)です。日産リーフの62kWhバッテリー搭載車が508Km(JC08モード)なので、思った以上に差がありますが、町中を走るEV車に長距離は不要というのがホンダの判断です。見方を変えれば、航続距離を切り捨てて他の部分で差別化を図ったというEVということになります。

「ホンダ e」は8月27日に予約を開始しましたが、第1期の注文受付数が店頭発売日の10月30日を前に予定台数に達したため、現在は第2期オーダー(納車時期目安は2021年1月以降)を受付け中とのことです。といっても「ホンダ e」は国内の販売目標が年間1000台(欧州では1万台)で、全国に2000店舗以上あるホンダディーラーの数より少なく、月で割るとわずか83台強です。そのため今回オーダーストップとなった第1期の受付台数も数百台と見られています。

初年度の目標は控えめですが、ホンダは2030年までに世界で販売する四輪車の3分の2を電動化する目標を掲げています。欧州に関しては2022年までにすべての四輪車を電動車両にする計画です。

EVをつくらなければ大ピンチに陥るCAFE規制ってなに?

欧州のCAFE規制_cafe-header

自動車関連サイトに掲載された「ホンダ e」の関係者のインタビューを読むと、どの担当者も「ホンダ e は欧州のCAFE対策としてつくった」と公言してはばかりません。それらの発言からは、環境のため…というよりも、とりあえず来年から本格運用される欧州の排ガス規制に対応するために”早急にEVをつくらざるを得なかった”という本音が見えてきます。

CAFE(カフェ)というのはCorporate Average Fuel Efficiencyの頭文字を取った略語でそのまま訳すと企業別燃費基準という意味になります。これは個々の車ではなく企業ごとに燃費を規制しようという施策です。具体的には地域内でその自動車メーカーが発売するすべての車両の燃費を合算し、その平均に対して目標値を定める方式です。そのため燃費が悪い車種が多いメーカーほど不利になります。

CAFE方式の規制を行っている国は多数ありますが、欧州(EU)は目標値が非常に厳しく、1リッターあたりの走行で排出するCO2排出量が95g、燃費に換算すると約24.4/Lとのこと。そして基準を守れない場合はその会社が地域内で販売するすべての車に対して1台1グラム当たり95ユーロ(約1万2千円)の罰金が科されます。

もし目標を満たせずにCO2排出量の平均が基準値を10gオーバーした場合、その会社が欧州で車を10万台売ると9500万ユーロ(約10億2000万円)という大変高額な罰金が科されることになります。ある報道では各社の罰金を合計するとその総額は1.8兆円にも上るのではないかと予想されています。

この罰則規定は、2020年に販売された車を対象として2021年から本格施行されます。そのため現地で車を販売しているメーカーはホンダに限らず、レクサス、アウディ、プジョーなどが年内に滑り込むようにEVを次々と発表し、今年(2020年)はEVの新発売ラッシュとなりました。欧州のCAFEではEVを「CO2排出ゼロ」と定めており、EVを売れば売るほど平均値を下げられるからです。

CAFEは日本でも導入済み。2020年から厳しい目標設定

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(画像:日本経済新聞社

英国のコンサルティング会社が2019年の販売実績を基に試算してみたところ、欧州のCAFE規制で支払う金額が一番大きいと予想されているのはドイツのフォルクス・ワーゲン社で、このまま何の対策も取らなければ、45億ユーロ(日本円で約5,500億円)の罰金が課される可能性があるそうです。これは同社の19年の営業利益の4分の1に相当します。

トヨタは約22億円ですが、ホンダは約390億円です。これでは確かにF1に目の飛び出るような開発費(一説では数千億円)を注いでいる場合ではないのかもしれません。

実はCAFEは日本でもすでに導入されています。けれど昨年までは2011年に策定された基準値(17.6km/L)が低く、目標年度の2020年を待たずにクリア(2017年)されていたため大きな話題にはなりませんでした。

ところが昨年新たに設けられた基準が欧州並みの厳しさだったことから衝撃が走りました。新しい基準は2030年度までに新車の平均燃費を25.4km/Lにすること。これは2016年度の実績に対して32.4%という大きな改善を強いるものです。

日本の場合は罰金が100万円と低額ですが、達成できない場合は社名を公表されるので大きなダメージはまぬがれません。またEV車のCO2排出量をゼロとした欧州と異なり、日本では今まで対象外だったEVとPHEV(プラグインハイブリット車)も今回から対象となります。

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世界の自動車燃費規制の進展と電動化の展望(画像:財務総合政策研究所

国によるルールの違いはそれなりにあるものの、CAFEはいまや世界的な自動車CO2規制の主流となっています。明確なのは、今後、自動車メーカーは次世代エコカーを1台でも多く売らなければ会社の存続も危ぶまれる事態になり得るということ。

話題を欧州に戻すと、その分野で立ち遅れているメーカーは、巨額の罰金を払えずに市場からの撤退を余儀なくされたり、米テスラのようなEV専門メーカーから排出を買うなどの対応を迫られているのが現状です。(ネットの下馬評では欧州CAFEをクリアできる日本車はトヨタ、日産、ホンダまで?)

CAFEは平均値を見ていく規制なので、そこからはみ出す車がすぐになくなることはありませんが、各社がEUや他の国の基準値を満たしていくためには、燃費の悪い大型の高級車やスポーツカーなどは明らかに数字を妨げる存在です。今後発売される新車はCAFE規制に沿って均一化されていくと思われますが、そんな中で発売されたユニークな「ホンダ e」は、あくまでも個性を主張したいホンダ魂が生かされている車種といえるのかもしれません。

(ミカドONLINE編集部)


出典/参考記事:ホンダ、新型EV「Honda e」第2期オーダー受付開始 ホンダの新型EV「Honda e」開発責任者インタビュー “街中ベスト”を目指した理由とは 年間1,000台!? なぜ「ホンダe」の販売計画は消極的なのか 「ホンダe」開発責任者に聞いた、ホンダ「EV戦略」の全貌 「ホンダe」やレクサス「UX300e」…2020年に新型EVが続々登場する理由 欧州で車排ガス規制、罰金1.8兆円 2030年には25.4km/ℓに! 国交省・経産省が新燃費基準値を発表 カローラスポーツHybridレベルがクリアすべきハードルになる。  など

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