エネマネ最新事情(29) ~セメントを使わないコンクリートでCO2排出産業のゼネコンが一転してCO2回収産業になるかも?~

みかドン ミカどん先日テレビを見ていたら、女の子が「そのレトルトカレーはレンジでCO2排出が減るんだよー」と叫ぶCM(ハウス食品)があってびっくりしました。温暖化防止がついに家庭用商品にまで!と驚くと同時に、脱炭素を大きく掲げたハウス食品のCMにチャレンジ精神を感じました。CO2などの温室効果ガスの抑制は世界的に大きな課題となっていますが、今回はCO2を回収して減らす大成建設が開発した新しいコンクリートのお話です。

大成建設がセメントを使わないコンクリートを開発!そのワケは?

大成建設が開発したのはCO2を製造過程で封じ込めたカーボンリサイクル型の新しいコンクリートです。1立方メートルあたり最大170キログラムのCO2をコンクリートに封じ込めることができるこのコンクリートの開発によって、CO2排出産業だったセメント業界やゼネコンが、一転してCO2回収産業なる可能性も出てきました。

コンクリートはセメントと水と砂と砂利と混和剤を混ぜ合わせてつくるとても身近な建築材料です。安価で使いやすいため消費量も非常に多く、日本のコンクリート消費量を人口で割るとひとりあたり1500kgも使っている計算になるそうです。

地球上で水の次に流通量が多いと言われる生コンクリートですが、コンクリートに用いられるセメントを製造する際に発生するCO2は、人為的排出量の約6%を占めると言われ(一説では8%)国内の産業部門においても電力、鉄鋼、化学に次ぐ第4位の排出源となっていますが、この解決方法は長い間見つかりませんでした。

セメント製造では主成分の酸化カルシウムを得る際に、石灰石を加熱分解してCO2を抜くという工程があるため(CaCO3⇒CaO+CO2↑)セメントを製造する限りCO2排出は避けられないからです。

しかしこのたび大成建設が開発したカーボンリサイクル型のコンクリートは、なんとセメントを使わない驚きのコンクリートなのです。使用するのは大気中のCO2とカルシウムを合成した炭酸カルシウムです。

しかもただ置き換えるばかりでなく、炭酸カルシウムの製造でCO2を大量に使うのでCO2の回収に大いに役立ちます。世間の関心を集めたこのこのニュースについては、わかりやすい脱炭素メディア【エナシフTV】さんが動画で隈なく解説なさっていますので、冒頭の動画もぜひご覧になってみてください。

セメントを使わないコンクリートでカーボンリサイクル

カーボンリサイクル・コンクリートの供試体。右は同じコンクリートで造った石材調建材の加工例(写真:大成建設)

前項でも触れましたが、コンクリートを製造するときのCO2排出量の90%以上はセメント生産に由来します。そのためコンクリート業界では”セメントを使わなければCO2排出量が減る”という大前提のもとに、各社が様々な開発を行っています。

「セメントを使わないコンクリートなんてあるの?」と一瞬思ってしまいますが、水と反応して固化し、砂や砂利を結着させるアルカリ性の素材であれば代替が可能です。

大成建設ではすでにセメントの代替品として、高炉スラグと呼ばれる製鉄時の副産物やフライアッシュと呼ばれる石炭燃焼時の灰を活用し、CO2を80%削減できるコンクリート「T-eConcrete」を開発してきましたが、カーボンリサイクルにあたってはコンクリートの耐久性、強度、施工性に課題がありました。

CO2は酸性の化合物であるため、コンクリートに直接使用するとコンクリートの強アルカリ性が中和され中の鉄筋が錆びてしまいます。そこで同社では「T-eConcrete」の製造過程で排出されるCO2とカルシウムを合成して炭酸カルシウムをつくり高炉スラグ主体の結合材でコンクリートを固化することにしました。

ちなみに炭酸カルシウム(CaCO3)は石灰石や大理石などの主成分で、これが長い時間をかけて溶解と固化を繰り返したものが鍾乳洞です。

炭酸カルシウムは弱アルカリ性なので、大成建設の今回の技術ではコンクリートの強アルカリ性を保てるそうです。また強度や粘度の面でも通常のコンクリートと同じく使えるとのこと。そのため従来の装置や設備がそのまま使えることも強みです。

もちろん炭酸カルシウムの製造工程でもCO2は発生します。けれどが、コンクリート内に閉じ込める量が上回るので総合するとカーボンはマイナスになるそうです。

実は実現はまだ先です

▲-eConcrete/Carbon-Recycleの切断面 (出典:大成建設)

▲T-eConcrete/Carbon-Recycleの性状 出典:大成建設

従来よりもCO2が80%削減できる、大成建設が2013年に開発した環境配慮コンクリートの製品名は「eConcrete」ですが、今回開発されたカーボンリサイクルコンクリートは「eConcrete/Carbon-Recycle」です。名前がちょっと長くなりますね。

カーボンリサイクルコンクリート「eConcrete/Carbon-Recycle」では1立方メートルあたり最大170キログラムのCO2をコンクリートに封じ込められます。その効果はCO2を地中貯留する技術「CCS」に匹敵するそうですが、最大の難点は価格が大幅に高いことです。

大成建設では「eConcrete」に関しては今年1月に研究会を設立して積極的な普及展開を開始しましたが、カーボンリサイクルコンクリート「eConcrete/Carbon-Recycle」のほうは実現にまだ時間を要するようです。

この事業は新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の委託事業として採択され、2020年度から24年度までの5年間実施されます。実用化は2030年前後を目指しており、2030年ごろには実証プラントも建築される予定です。

CO2固定化に向けた炭酸カルシウムなどの製造はJFEスチールや太平洋セメントなども実証実験を始めています。私たちはコンクリートとセメントの線引きが曖昧で半ば同じモノのような感覚さえ持ってしまいますが、やがてセメントを使わないコンクリートのほうが当たり前になる時代がやってくるのかもしれませんね。

(ミカドONLINE編集部)


参考記事:コンクリートを知らない人のためのセメントとコンクリートの話 セメントの製造過程で発生するCO2を減らすには?MIT研究者が排出物をなくして有益なものを得る方法を提案 意外な廃棄物も再利用?リサイクル材料を活用したコンクリート混和材料 脱炭素社会を目指すセメント産業の長期ビジョン(PDF) 低炭素社会の実現に向けた取り組み カルシウムおよびカルシウム化合物の化学的性質と化学反応 CO2排出80%減、「環境配慮コンクリート」を実施適用 大成建設、CO2からコンクリート製造 脱炭素に寄与 大成建設、CO2収支をマイナスにするカーボンリサイクルなコンクリ開発 カーボンリサイクル・コンクリート「T-eConcrete®/Carbon-Recycle」を開発 大成建設が“CO2を8割削減”する環境配慮コンクリの研究会を設立 など

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