エネマネ最新事情(32) ~おせんべいの香りがする郵便局の有料レジ袋はお米で作られたプラスチック製!~

みかドン ミカどん郵便局の有料レジ袋の匂いを嗅いだことがありますか?手に取って嗅いでみるとほんのりとおせんべいの香りがします。実はこのレジ袋のプラスチックにはお米が3割使われているんです。つくっているのはバイオマスレジン南魚沼という新潟の会社です。今回はお米を原料にしたプラスチックについての話題です。

おせんべいの香りがする郵便局のレジ袋

(仙台市内の郵便局で撮影。カウンター奥には宮城が舞台の朝ドラ「おかえりモネ」の東北限定切手も)

昨年(2020年)のレジ袋有料化に伴い、郵便局が採用したのはお米を30%含んだプラスチック(ポリエチレン)製の袋です。匂いを嗅ぐとほんのりとおせんべいの香りがして、手触りもサラサラと自然なぬくもりが感じられる少し不思議な素材です。

お米はポリエチレンやポリプロピレンなどのオレフィン系樹脂と相溶性がよく、お米のプラスチック樹脂はそれらを炊きながら混ぜるイメージだそうです。

植物由来のプラスチックはバイオマスレジンとも呼ばれていますが、このお米のプラスチック「ライスレジン」をつくっているのは新潟のバイオマスレジン南魚沼という会社です。

社名を拝見すると魚沼産の高級米が使われているような印象を持ってしまいますが、決してそうではなく、食用に適さない古米や米菓メーカーから発生する破砕米など、飼料にもまわせず廃棄されるお米が使われています。

また、ロスになった食糧米以外にも、台風などの水害で浸水してしまった出荷前の米や、日本酒の醸造過程で削られる精米時の米粉なども利用しているとのこと。

米どころである新潟は、主食としてのお米だけでなく日本酒や米菓などのメーカーも多数ありますが、その分、製造工程で発生するお米のロスも多く、そういった非食用米を活用してお米のプラスチック「ライスレジン」がつくられています。

台風で水に浸かった栃木県のお米を回収(画像:YouTube Biomass Channel

石油系原料を減らした植物由来のプラスチックは、CO2削減だけでなく食品ロスの削減にも貢献できます。

しかも従来の石油由来の樹脂と比べても、コストや成形性、強度などがほぼ同等レベルで、既存製品に対しても競争力があるため、SDGsを推進できる導入しやすい素材としていま多くの企業から注目されています。

海外に頼らないお米という国産の食物にこだわる

ライスレジンを製造しているバイオマスレジン南魚沼は2017年に設立されました。前身は食品商社出身の神谷雄仁(かみやかずひと)氏が2005年に創業したバイオマステクノロジーという会社です。

神谷氏は食品商社時代、健康食品の原料として魚の頭や尾から採ったDHAやEPAに携わり、価値のないものから価値あるものをつくりだすスタイルには元々親和性ありました。

そして今から15年位前、まだパリ協定もSDGsもなかった時代に米国を訪れ、そこで知った植物由来の生分解性プラスチックの存在が、起業の潜在的なきっかけになったようです。

バイオマスレジンは米国ではトウモロコシ、ブラジルではサトウキビがつかわれていますが、神谷氏は日本でこれを行う場合は海外に頼る必要がない国産植物で安定供給が可能な米が最適な素材ではないかと考えました。

お粥になったりお餅になったり熱のかけ方で多様に変化する米のありさまはプラスチックによく似ています。それをビジネスチャンスととらえる同氏のひらめきがあったと思われます。

しかし当時は植物でプラスチックをつくる発想はなかなか社会の理解が得られず、事業の継続には非常に苦労されたそうです。それを乗り越えることができたのは「気づきや発見の連続で面白かったこと」や「協力してくれる町工場や賛同してくれる農家さんの応援」だったとのこと。

数々の賞を受賞したお米をつかった知育玩具は同社の主力商品です。(画像:ソーシャルプロダクツ普及推進協会

現在では、同社が手掛ける「お米のおもちゃ」シリーズは、食物由来で「純国産」の安心感から出産祝いやお誕生日祝いの贈り物に選ばれるヒット商品になっています。

また、レジ袋等の包装資材だけでなく、ストローやカトラリー、お弁当箱、メンバーズカードなど、同社のライスレジンをつかった製品は増えつつあるようです。

バイオマスレジン南魚沼のライスレジンは生分解性プラスチックではありませんが、バイオマスレジンホールディングス社は最終的にそこを目指し、大学と連携しながら生分解性プラスチックの開発も進めています。

地域の課題を解決し地産地消で5%を目指す

バイオマスレジン南魚沼は昨年ホールディング化され、持ち株会社(株)バイオマスレジンホールディングス(本社:東京)の事業会社となりました。

同社では最近、耕作放棄地に工業用の米を作付けする事業を開始しています。後継者がいない全国の耕作放棄地を合わせると滋賀県の面積を上回るそうですが、今度はそういった土地の有効活用です。

また日本には全国各地に特有の農産物や地域事情があります。同社ではバイオマスレジン事業を全国展開し、その土地で得られる木粉や竹なども使いながら、生かされていないものを生かす事業に取り組んでいます。

具体的な例として私たちの東北では、福島県浪江町に株式会社スマートアグリ・リレーションズを設立して原発事故後の農業の再生を支援します。

国は2019年に「プラスチック資源循環戦略」を発表し、バイオマス素材のさらなる導入や、2030年までにバイオマスプラスチックを200万トン導入することなどを目標に掲げました。

バイオマスレジンホールディングスではそのうちの5%のシェア獲得を狙っており、事業の拡大に向けて着々と歩を進めています。

食糧問題とバッティングするトウモロコシやサトウキビをつかわず国産の非食用米を活用することは、海外に頼る必要がないだけでなく国内各地域の課題も解決します。現在、バイオマスレジンホールディングス社の代表取締役を務める神谷氏は、地域の事業者とWin-Winの関係を築きながら、「日本一もったいないをなくす会社」を目指しているそうです。

(ミカドONLINE編集部)


参考記事:株式会社バイオマスレジンホールディングス 地球に優しいプラスチック お米から生まれた「お米カード」新発売 スマートエネルギーWEEK2020で話題に、お米からできたレジ袋 「日本一もったいないをなくす会社」を目指すバイオマスレジン南魚沼。お米から作るプラスチックという挑戦

など

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