電池産業の軌跡(7) ~レガシーでもまだまだ使われている鉛開放型電池~

denshi-kiseki 電池産業の軌跡

みかドン ミカどん前回は鉛蓄電池の分類について書きました。今回は鉛の開放型蓄電池について解説をしていきます。

鉛開放型蓄電池の新規のニーズがなくなりつつあります

日本電気技術者協会のサイトから転載した「鉛蓄電池の分類」に編集部が加筆したものです。

構造 極板構造 形式 シールの種類
ベント型
(=開放型)
(=液式)
クラッド式 CS-□
ペースト式 PS-□
HS-□
シール型
(=密閉型)
クラッド式 CS-□E 触媒栓式
ペースト式 PS-□E
HS-□E
ペースト式 HSE-□ 制御弁式
(=※メンテナンスフリー型)
MSE-□

GSユアサの開放型鉛蓄電池

産業用の鉛開放型電池はベント型、液式などとも呼ばれ、水の電気分解によって発生した酸素や水素ガスを逃がすための通気孔があることや、失われた水分を補充するために定期的な補水が必要であることなどが特徴です。そのため水分の減り具合がわかりやすいように筐体が透明になっています。

CSやHSといった蓄電池の形式はJISで定められた大きさを表す規格なので各社共通です。形式が同じであれば大きさが同じなのでどのメーカーの蓄電池でも交換可能です。

開放型の鉛電池は初期の頃からスタイルが変わらない昔ながらの蓄電池ですが、現在では密閉型(シール型)に切り替わっていることが多く、新規での導入はほとんどありません。現在でも発電機の始動用として残っているものはいくらかありますが、それも今後は密閉型に切り替わっていくでしょう。

クラッド式(CS)とペースト式(HS)の用途の違いは?

(画像:古河電池

開放型の鉛蓄電池にはクラッド式とペースト式の2種類がありますが、この二つの違いは極板の構造の違いです。

クラッド式はガラス繊維をチューブ状に編み上げて焼き固め、その中に極板活物質である鉛粉を充填したものです。このチューブを並べたものが正極板として使用されています。

ペースト式は格子体とよばれる極板の骨組みにペースト状にした活物質(鉛化合物)を塗り込んで極板にしたもので、正極と負極両方に使用されています。

極板の違いは一度に流れる電流の大きさを左右します。クラッド式よりもペースト式のほうが電解液に接している面積が広いので、いっきに大電流を得ることができます。そのためペースト式は瞬間的に大きな電気を必要とする非常用電源や無停電電源装置(UPS)などに使用されています。

同等の電流は密閉型でも出せますが、開放型よりも価格が高くなるため、予算的な都合で開放型をご希望されるお客様もいらっしゃいました。

クラッド式は構造的にそこまでの大電流は得られませんが、クラッド式は寿命が長いため瞬時放電の必要がない場所で使用されており、具体的には電話交換機用や大きな電流を必要としない設備のバックアップ用に使われています。また振動や衝撃にも耐性があるため、建築現場の機器等のバックアップに使用される鉛蓄電池も一部にはあるようです。

      

ところで分類表に掲載のあるPS型の電池ですが、機能的にはクラッド型とペースト型の中間のような位置づけです。独自に開発された経緯のある蓄電池のためあまり一般的ではありませんが、この電池は鉄道会社に採用されて、現在は踏切を動作させるための電池として使われています。

開放型の蓄電池が新規で使われることは非常に少なくなりました。ただし、発電機などでは今でもHS型などが最初から搭載されている場合もあるようです。

開放型の鉛蓄電池は価格が安いことから更新需要はまだありますが、実際には期限切れに気づかずにそのまま使われているようなケースもよくあります。皆さん、この機会にぜひご確認ください。

(ミカドONLINE編集部)


出典/参考記事: 日本電気技術者協会 など

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