ミカドサイエンス&テクノロジー講座 ①レアメタルってなんですか?

みかどん2今回の新型コロナウィルスの感染拡大で、マスクは中国への依存度がとても高い製品だったことがわかりました。レアメタルもまた特定の国に産出が偏っている非鉄金属です。そのため政府は今年の3月に備蓄の強化を決めました。それにしてもレアメタルとはいったいなんでしょうか?

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コンゴのレアメタル鉱山

レアメタルの需要が増してきた背景

昨年ノーベル化学賞を受賞した吉野彰博士は旭化成の社員でしたが、最初から電池の開発に取り組んでいたわけではありません。吉野博士が着手したのは白川英樹筑波大学名誉教授(2000年ノーベル化学賞受賞)が発見したポリアセチレンという電気を通すプラスチックの活用方法でした。その研究が発展してやがてリチウムイオン電池の負極材料の発明につながったのです。

新しい機能や新しい目的のためには、新しい素材の発見が欠かせません。その流れの中で世界中の化学者やメーカーが、それを可能にする物質を血眼になって探しています。
現代の「発明」は、革新的でユニークな商品(完成品)を考え出すことよりも、それを実現する素材の発見や開発のほうに焦点が移っていると言えるかもしれません。

そこで浮上してきたのが従来の金属にはない特性を持つ、レアメタルと言われる希少な金属です。
金属は大きく3つに分けられ

①鉄や銅、亜鉛、鉛、アルミニウムなど一般的に広く使われているものをベースメタル、
②金、銀、白金(プラチナ)やパラジウムなど希少で耐腐食性がある8元素が貴金属、
③それ以外の金属が広義のレアメタル

ということになります。

たとえばネオジムというレアメタルでつくった磁石は通常の磁石の4倍の吸着力を持ちます。さらにそれにジスプロシウムというレアメタルを加えると耐熱性が向上するため、高温対策が欠かせない、自動車内部の複数のモーターに多く利用されています。

身近なところではスマートフォンやノートパソコン、そして当社で取り扱っている電源バックアップ用リチウムイオン電池のリチウム(イオン化傾向大)もレアメタルですし、航空機の機体やゴルフクラブにつかわれるチタン(軽量、強度大)もレアメタルです。

このように時代の変化と共に、個性的な特色を持つレアメタルのニーズが飛躍的に増大しています。その反面、鉄や銅などと比較すると地球上での存在量が少ないために、各国ともその確保や代替手段の確立に躍起になっている現状があります。

レアメタルという言葉には日本独自のニュアンスがある

実は日本で言われるレアメタルと英語のレアメタルには異なる意味合いがあります。英語ではレアアースと同義語で希土類と呼ばれる一部の元素をさす固定的な言葉ですが、日本では一般的に以下の特長を持つ非鉄金属を総称し、どの金属がレアメタルに相当するかは状況によって変わります。

(1)量が少なく希少(=レア)な金属(=メタル)
(2)量は豊富でも採掘や抽出などが技術的に困難で入手しにくい金属(チタンなど)
(3)これまで用途が少なく工業的に未開発な金属(万年筆のペン先につかわれるオスミウムなど)

つまり日本の「レアメタル」には(1)~(3)の理由で素材としての安定供給に不安があるというニュアンスがあるのです。しかし課題はそれだけではありません。

下の図に示す通り、レアメタルは特定の鉱物が特定の国に偏っているのです。これはその国が独自に輸出制限をしたり政情不安に陥ってしまうと、世界中の供給が途絶えてしまう危険性があるということになります。
また、レアメタルが産出される地域には紛争地が多数含まれ、安全に立ち入れないばかりでなく、非正規の密売ルートが武装勢力の資金源になっていたります。

レアメタルは以前から「産業のビタミン」と言われて、産業上の重要性が認識されてきました。しかし近年、レアメタルがないと作れない製品に産業が大きく依存するようになり、レアメタルは「産業の生命線」になっています。
特に日本では国際的に競争力のある自動車やハイテク製品に多数利用されており、産業の振興に不可欠な原材料となっています。

日本で備蓄対象とされているレアメタルは34鉱種(55元素)

そのため日本では経済産業省がレアメタルを「地球上の存在量が稀であるか、技術的・経済的な理由で抽出困難な金属のうち、安定供給の確保が政策的に重要」と独自に定義し、令和元年の資料では、以下の34鉱種(55元素)を備蓄対象としています。

備蓄対象の34鉱種(55元素)リチウム[Li] ベリリウム[Be] ホウ素[B] チタン[Ti] バナジウム[V] クロム[Cr] マンガン[Mn] コバルト[Co] ニッケル[Ni] ガリウム[Ga] ゲルマニウム[Ge] セレン[Se] ルビジウム[Rb] ストロンチウム[Sr] ジルコニウム[Zr] ニオブ[Nb] モリブデン[Mo] インジウム[In] アンチモン[Sb] テルル[Te] セシウム[Cs] バリウム[Ba] ハフニウム[Hf] タンタル[Ta] タングステン[W] レニウム[Re] タリウム[Tl] ビスマス[Bi] REE(希土類=レアアース),  白金族元素(ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム、白金)[PGM] 炭素[C] フッ素[F] マグネシウム[Mg] ケイ素[Si]

参考:[PDF]新・国際資源戦略の策定に向けた論点(資源エネルギー庁)

貨幣やステンレスにつかわれるニッケルが対象になっていることに意外な印象を持ちましたが、ニッケルは効率良くリサイクルできることや、精錬の過程でコバルトやプラチナパラジウム等の白金族が分離されるので、そのためかもしれません。ほかにも個人的に意外な感じがした元素もありますが、もしかしたらニッケルのように、私達が知らない何かの根拠があるのかもしれませんね。

この34鉱種(55元素)のうち、レアアースと呼ばれる希土類はなんと世界の97%を中国が算出しており、どの国も中国に頼らざるを得ない状況です。(コバルトなど他の物質も偏在が大きいです)
そのため新型コロナウィルスで中国からの物流が途絶えたここ数か月は世界中の工業に大きな影響が出てしまいました。

レアメタルは具体的にどこにつかわれているの?

上の動画で東京大学生産技術研究所の岡部徹教授が「走るレアメタル、空飛ぶレアメタル」というテーマで、自動車や飛行機につかわれているレアメタルについて、とても分かりやすく解説してくださっています。(若い女性を相手にニヤニヤされている箇所もありますが(笑)、別の講演録を拝読しても、ユーモアのある先生であることがわかります^^)

先生によると”自動車はレアメタルの塊”だそうですが、ほかにも一例として下図のような分野でつかわれています。

私の感覚としては、供給に不安が残る素材がなぜこれほど使われているのか?という疑問がぬぐえませんが、使ってみてよかった結果、あっという間に普及してしまい、逆に供給が心配になってきた、というのが真実なのかもしれません。

レアメタルの安定確保がカギ

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4月7日に決定した20年度の補正予算案では、新型コロナウィルス対策とともに、レアメタルの備蓄対策費も盛り込まれました。

参考:政府補正予算案、レアアース関連の技術開発推進。部素材調達ソースを多様化、サプライチェーン強靭化へ

国ではほかにも、リサイクルを推進したり、中国の影響をなるべく抑えるために、中国以外の国との関係づくりを強化したりしています。

参考:>EV普及のカギをにぎるレアメタル|スペシャルコンテンツ|資源エネルギー庁

そんな中、昨年の12月、日本の南鳥島周辺の排他的経済水域に、日本の需要の約300年分に相当するコバルトを含む、マンガンノジュールと呼ばれる希少金属の塊があることが確認されました。この事実は以前からわかっていましたが、昨年初めて調査によって分布範囲が確認できたのです。

この塊は排他的経済水域の外にもあると思われ、すでに中国が一部のエリアで採掘権を獲得しているそうです。

何年か前に領土問題でもめた「竹島」も、もとはと言えばレアメタルの争奪戦でした。争わなくても採掘できる資源が国内にあるのなら、早く資源として活用してほしいのが心情です。けれど放射性元素を内在していることが多いレアメタルの生成を国内で行うためには、高額な環境汚染対策を講じる必要があり、規制が緩い中国や途上国の低コストには太刀打ちできません。

私達が何気なくつかっている携帯電話やスマートフォンにも、様々な世界の事情が反映しているのです。

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