地域の風を地域のために。山形県の風力発電の1/3を保有する加藤総業様(山形県酒田市)にお話を伺いました

みかドン ミカどん農山漁村再生可能エネルギー基本計画に基づいて昨年建設された山形県庄内町の風力発電所は地元の3社がそれぞれ4基ずつ風車を設置して発電事業を行っています。その1社である加藤総業様(山形県酒田市)は固定価格買い取り制度(FIT)が始まる前の早い段階から風力発電事業に取り組んでいます。今回は当社代表取締役の沢田が加藤総業株式会社の加藤聡代表取締役社長にお話を伺いました。

山形県内の風車の1/3を保有する庄内の風力発電の第一人者

加藤総業株式会社(本社:山形県酒田市)は今年で創業123年を迎え、庄内地域では歴史のある建設資材卸会社です。同社は固定価格買い取り制度(2012年開始)が始まる前の早い時期から風力発電事業に取り組み、最初の風車は2005年に運転を開始しました。

現在は、昨年竣工した庄内町の4基を含めるとグループ会社全体が保有する風車は20基になり、山形県内の風車(60基。すべて庄内地域)の1/3を占めるに至っています。

今回は、風車の少ない宮城にいてはなかなかわからない風力発電と風車のお話を山形県の草分けでもある加藤総業株式会社の加藤社長に伺いました。

FIT以前の風力発電は抽選形式でした

オリエンタルカーペット(山形県山辺町)が製作した風車のタペストリーの前で記念撮影(右が加藤社長)

沢田 かなり早い段階から風力発電に取り組んでいらっしゃいますが、FIT以前にこの事業に参入されたきっかけは何だったのでしょうか?

加藤社長 バブルが崩壊したあとの2000年前後はとても大変な時期でした。建設業も事業が大幅に縮小してしまい、地域には仕事が全くありませんでした。私たちは建設業に資材を納品するビジネスですので、そういった現状に大きな不安を感じ、新しい収入源を模索し始めたのがそもそもの背景です。居酒屋をやろうか?などと真剣に思いましたよ。

ですが、その当時は東京から大手のエネルギーコンサル会社が何社も訪れて地域企業との協業をさかんにアプローチしている時期でした。庄内地方は日本でも有数の強風地域ですが、風力発電は地元の協力がないと前に進めない事業です。

そのため弊社にもいくつかの会社から打診があったんです。そこでいろいろとお話を十分聞いたうえで、ある一社と手を組んで「やってみよう」と決心したんです。風力発電の売電事業なら何のノウハウもない居酒屋と違い、風車を建てるのに建設資材を多く使うところで弊社の事業とも親和性がありますしね。

沢田 確かにおっしゃるとおりですね。そこから順調に数を伸ばして来られたのですか?

加藤社長 いえ。弊社では2005年、酒田市に「庄内風力発電所」という名称で3基を建設して初めて最初の風車を稼働させました。ところが、その後は東北電力さんへの売電の権利が抽選方式に変わってしまい非常に苦戦しました。

本当にくじ引きなんです。「今回は何万kWまで」と募集容量が決められていて、くじ引きで早い数を引いた人から順番に計画容量を申請して枠を埋めていきます。けれどこれが何度やってもなかなか当たりません。

そこで東北電力さんが別途募集していた「蓄電池等併設型」という風力発電事業に応募することにしたんです。それが今の遊佐風力発電所です。これは蓄電池を置いて単に電気を溜めるのではなく出力変動そのものを緩和するタイプで、日本でも数少ない形式です。

もちろん蓄電池設備を併設するので建設費が大幅に増えてしまいますが、その分、応募者も少ないのではないかと考えました。たとえ建設費が増えてもぜひこの事業をやりたかったんです。結果的にこのときは3番を引き当て、滑り込みセーフのような形で参入することができました。発電容量が半端な数(14,560kW)なのは、3番くじを引いた当社に残っていたギリギリ一杯の容量枠がその数字だったためです。

FIT以降は条件が大きく緩和されたので、その後は風車の数を増やし、今では弊社の事業の重要な柱になっています。買取価格が下がる前に事業者選定をしていただき、一定数の風車を建てられたことも大きいです。

事業者選定から稼働するまでに6~7年かかります

加藤総業グループが保有する風力発電所

沢田 庄内町で昨年稼働を開始した風力発電所では12基の風車を3社で4基ずつ担当されていますがそちらの経緯もお聞かせください。

加藤社長 はい。あの場所は伝説的な風の通り道と言われておりまして、あそこで風力発電をやりたい事業者はたくさんいたんです。そこで庄内町が間に入り、農山漁村再エネ法に従ってプロポーザル入札を行い、町の事業として風力発電を誘致した形です。

※プロポーザル・・・価格で決めるのではなく、提案内容を吟味し、事業実施方針、実施体制、技術力、事業実績、地域貢献度なども含め、総合的に優れている提案者を選ぶ方式

私たち三社(加藤総業、安藤組、大商金山牧場)が手を挙げたのは、地元の風は地元の利益のために使われるべきだと思ったからです。東京資本の会社では利益も固定資産税も法人税も地元には落ちず、せっかく吹いている庄内の風が地元の役に立ちません。再生可能エネルギーは地元の企業が取り組むことに意義があると思います。

その思いが庄内町の構想と合致して、この事業では私たち三社の組み合わせを庄内町に選んでいただきました。全12基のうち弊社が建てた4基の風車は鶴ヶ峰風力発電所という名前で昨年から稼働を開始しています。

沢田 庄内町の事業では先に安藤組の安藤社長から事業者選定から竣工・稼働まで7年かかったと伺いました。どの辺に一番時間がかかるものですか?

ブレード取付作業(鶴ヶ峰風力発電所)

加藤社長 風車はどれも動き始めるまでだいたいそのぐらいの年月はかかります。

建築自体は1年ぐらいですが、その前段階のところでやることが多いんです。許認可などもそうですが、環境アセスメントにも数年かかりますし、地域の皆さんへの説明にも時間をかけて何度も行います。

環境アセスメントは3段階に分けて実施され、その段階ごとに少なくとも1回はその集落で説明会をしなくてはなりません。

段階が進めばまた1回、さらに進めばまた1回です。それも集落ごとに行ったり庄内町全体に対して行うものなど様々なスタイルがあります。皆さんの負担にならないように三社合同の説明会が多かったですが、振り返ると相当な回数をさせていただいたと思います。そのたびに地域の皆さんのご質問に誠心誠意お答えし、その積み重ねでここまで来ています。

ほかにも、建設地に一番近い2つの自治会の同意書が必要であるとか、それをいただくための準備や合意形成までのプロセスなどが色々ありまして、建てた側としては、振り返ると本当にあっという間でした。

風車の最大の敵はカミナリです

酒田大浜風力発電所にて

沢田 運用にあたってのご苦労はありますか?たとえば風車の敵はカミナリとよくいいますが・・・

加藤社長 カミナリは落ちます。本当によく落ちます。記録を見るとわかりますが、何十ではききません、もう何百と落ちていると思います。

通常、風車自体が避雷針になっているので、大きな影響はないのですが、2013年11月の夜に地元でも有史以来最大ではないか?と噂されるぐらいのものすごいカミナリが弊社の遊佐日向川(ゆざにっこうがわ)風力発電所に落ちたんです。そして風車のブレードが壊れてしまいました。その日は気象データの上でも稀に見る強いカミナリだったようです。

それを教えてくださったのは地元の自治会長さんなのですが、農家さんは朝が早いので朝一番に弊社の風車を見て「加藤さん、壊れてるよ」と連絡をくれました。

風力発電の風車は壊れたら届け出を出さなくてはなりません。統括官庁の事故調査もありますし、地域の皆さんにも説明をしなければならないのですが、実は弊社のこの落雷事故がきっかけで日本海側特有の冬場のカミナリには対策が必要ということになり、それ以後の風車のしくみや仕様を見直すきっかけになったようです。一方、弊社でも保険のありがたみを痛感する機会になりました。

🌍 遊佐日向川風力発電所 事故調査状況報告(PDF)

今は風車に一定以上の電流が流れると自動的に止まるしくみになっています。風車は日本では製造していないのですべてが海外製になりますが、こうやって日本の風土に合ったノウハウが蓄積して安全性がより高まっていくのだと思います。

風力発電は買取価格がかなり下がりましたし、風況の良い陸の適地も少なくなっています。ですが、この庄内では遊佐沖が有望区域に指定されており、今後は大規模な洋上風力発電が増えてくると思います。地域の風が地域に利益をもたらしてくれるよう、当社も引き続き取り組んでいきたいと思っています。

沢田 早い時期から風力発電に取り組んでいらっしゃる県内第一人者の加藤社長から詳しいお話を聞くことができて今日は大変参考になりました。本日はどうもありがとうございました。

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みかドン ミカどん【編集部より】加藤社長にはインタビュー終了後に同社の酒田大浜発電所(最後の写真)を案内していただきました。するとそこはなんと、当社の沢田がトライアスロン大会でよく訪れる海岸でした!当社の沢田は世界大会の経験もあるトライアスリートですが、この地で大会が行われるときは、加藤総業様の風車をいつも眺めながら試合前のウオーミングアップに励んでいたそうです。さらに加藤社長は私(編集部)の酒田の友人と同じ中学で同じ部活動だったことがわかり、今回の取材は思いがけず重なったご縁におおいに盛り上がりながら終了いたしました。


取材先:加藤総業株式会社(本社:山形県酒田市)
*加藤聡(かとうさとし)様/加藤総業株式会社 代表代表取締役社長
取材日:2022年4月27日
取材者:ミカド電装商事株式会社 代表取締役 沢田秀二 ミカドONLINE編集部

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