雑草:名もなき草の名(02)~イタドリはイギリスでは日本発「嫌われ者」の代名詞~

    みかドン ミカどん新シリーズ「雑草!名もなき草の名を知ろう」です。今回から造成地や道端や河原でよく見かける雑草をご紹介していきます。最初に登場するのはイタドリです。イギリスでは資産価値を落とすほどの厄介者ですが、西日本ではこれを食べる習慣があり、なんと高知県ではソウルフードなのだそうです。

    よく見かけるけど名前はよくわからない?

    (画像:愛すべき雑草たち
    イタドリ(虎杖、Fallopia japonica)は、タデ科の多年生植物。山野や道端、土手などのいたるところで群生し、草丈は1.5メートル (m) ほどになる。雌雄別株で、夏から秋に細かい白花を咲かせる。春先の若芽は食用になる。傷薬として若葉を揉んでつけると血が止まって痛みを和らげるのに役立つことから、「痛み取り」が転訛してイタドリになったというのが通説(Wikipedia

    イタドリは農村部の道端や河原などに群生しているのがよく見られるとても日常的な植物です。茎が空洞で若芽には酸味があるため「すかんぽ」という別名があり、「子供時代に採って食べた(かじった)」というご年配の方もよくいらっしゃいます。

    茎の節ごとに赤紫の筋が入り、それがトラの縞模様に似ていることから、漢字では「虎杖」とも書き、漢方では「虎杖値(こじょうこん)」として生薬にも使われていますが、人気アニメ(コミック)『呪術廻戦』の主人公の名前が虎杖 悠仁(いたどり ゆうじ)であることから、最近ではあっさり読める人が多いようです。

    私は自宅近くの堤防に群生しているこの植物の名前を長い間知りませんでした。美しい花を咲かせる園芸植物ならいざ知らず、道端の草には誰も興味を払わないものです。もしかしたら皆さんも同じかもしれませんね。

    英国ではおそろしく爆発的な繁殖力が「嫌われ者」の代名詞に

    (画像:HORTI薬草と花紀行のホームページいいだか進の散歩道

    イタドリは繁殖力が極めて旺盛で、刈っても刈ってもすぐにまた生えてくる生命力の強さを持ち、崩落地などでもいち早く群落を形成します。地下茎で増えるため非常に駆除が難しく、ちょっとやそっとでは枯れてくれません。

    イタドリにはアスファルト舗装を突き破るほどのたくましさがあり、一度繁殖すると地域の在来種を駆逐してしまうため「世界の侵略的外来種ワースト100」にも指定されています(汗)

    イタドリは日本が原産国のため英語で「Japanese knotweed」と呼ばれ、ヨーロッパにはシーボルトによって観賞用として持ち込まれました。ところがほかの植物を凌駕してしまうあまりの爆発的な繁殖力が忌み嫌われ、イギリスではイタドリ(Japanese knotweed)がとても厄介な植物という位置づけになってしまいました。

    イギリスでは土地にイタドリが生えていると不動産価値にも影響するようで、イタドリを駆除した土地でないと購入ローンを受け付けない銀行まであり、土地の購入後にイタドリが発生がしたときの法的請求なども増えているそうです。

    🌎Japanese knotweed warning: Cases of invasive weed on the rise after stamp duty rush

    2010年3月、イギリスの環境・食料・農村省はに、イタドリの天敵であるイタドリマダラキジラミを国策として日本から輸入することを決定しました。日本ではこの虫がイタドリの繁殖をある程度抑えていますが、イギリスにはこの虫がいないためイタドリが雑草として猛威を振るってしまったと思われます。

    そのためイギリスではイタドリの英名「Japanese knotweed」が嫌われ者の代名詞となり、かつて失政が不評を買った同国のメイ首相は「イタドリ首相」(Japanese knotweed prime minister)と呼ばれたそうです。言葉自体は日本に悪意がなくてもJapaneseという単語はちょっと気になりますよね。

    高知県ではソウルフードらしい

    宮城に住む私の個人的な感覚では、イタドリは空き地などにうっそうと繁殖する不気味な?植物というイメージですが、地域によってはこれを食べる習慣があると知り少し驚いています。

    特に高知県では「ソウルフード」として、春先の若芽をアク抜きしたあと、煮たり炒めたり漬物にするなど、一般の家庭で広く料理されているようです。

    また和歌山県でも山菜として扱われており「イタドリ」「スカンポ」のほか「ゴンパチ」「スッポン」などの呼び名で他県より多く消費されているとのこと。

    そんな中で、イタドリを食べることに初チャレンジした宮城県民のブログを見つけました。採取地は宮城県山元町。イタドリを食べる習慣がない宮城県で若芽を摘み取る作業は結構人目が気になったそうですよ(わかる!)。ぜひ読んでみてくださいね。

    🌎雑草のはなし2「イタドリを食べてみる」|雑草計画

    (ミカドONLINE編集部)


    出典/参考記事:イタドリ イギリス、イタドリ駆除のために「タデ食う虫」を日本から輸入へ 英国のメイ首相が「イタドリ」呼ばわりされているらしい 日本の虫よ、英国を救え 高知県民が愛する春の山菜「イタドリ」を使って夕食作り!高知のじいちゃんばあちゃんYouTuber「チロちゃん」 海外で爆発的に繁殖!日本から持ち込まれた植物がすごいことになっている など