【ヒストリー】35.こたつ~温度よりも見た目が大事?~

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    こたつの歴史は意外に古く、囲炉裏の上にやぐらを組んで布団をかけた室町時代がその起源と言われています。やがて囲炉裏に替わって火鉢が使われるようになり、移動可能な置きごたつとして江戸時代中期に普及しました。その後、熱源が火鉢からあんかに変わり、こたつは庶民の手近な暖房器具として親しまれていましたが、やぐらの中にあんかを床置きするので足を延ばすことができず、火傷や一酸化炭素中毒なども懸念材料でした。

    床置きが当然と思われていた熱源を、逆転の発想でやぐらのほうに取り付け、初めて電気こたつを発売したのが東芝です。東芝の「電気やぐらこたつ」は家族が足を延ばしてリラックスできる念願の商品として、1957年に販売を開始し、以後のこたつのスタイルを確立させました。しかし、この画期的なアイデアも、すぐに大ヒットしたわけではありません。実は、当初発売されていた電気こたつは熱源部分が白色だったため、多くの人が「これで本当に温まるのか?」と疑問視してなかなか売り上げが伸びませんでした。けれど、その3年後に赤外線ランプ式が登場すると、点灯と同時に暖かさが得られることや、何よりも視覚的に暖かい赤色の光が人気となり、やぐらこたつはそこから爆発的に売れ始めたのです。

    残念ながら1973(昭和48)年をピークにこたつの出荷台数は減少していきます。大手メーカーは事業から撤退し、東芝も2000(平成12)年に生産を終了ました。現在、こたつを製造しているのは中小のメーカーだけになりましたが、机にして勉強したり、テーブルにしてご飯を食べたりできるので一人暮らしの若者にはまだまだ一定のニーズがあるとのこと。ちなみにいまは、ミカンの出荷量も激減しているそうですが、これをこたつと関連付けて、「ミカンを食べる機会が減っているため」と、とらえる意見もあるようです。皆様のご家庭ではいかがでしょうか?