事業継続の課題を解決Ⅳ BCPの組み立て方①(BCPの基本~発災による事業停止の影響と復帰までの猶予)

    BCPイメージ

    前回は、私たちが経験した東日本大震災発災初期から営業再開(初期)あたりまでの当社の行動をお伝えさせていただきました。今回から4回シリーズで、具体的なBCPの組み立て方についてお伝えさせていただきます。※全ての記事はこちら

    (ミカド電装商事(株) 代表取締役 沢田 秀二)

     

     

    まず、組み立て方の前に災害発生時に企業が果たすべき役割を書かせていただきます。ここを押さえることによって各事業所様の考え方、思いが反映されたBCPに出来上がるのではと思います。

    災害復旧でよく使われる言葉として、自分の身は自分で守る「自助」、地域や小集団でお互いに助け合う「共助」、自治体や国が公的に手を差し伸べる「公助」があるとされていますが、最近ではこれに加えて「共助」と「公助」の間に立つ「産助」という企業が出来る援助を表す言葉が見られるようになりました。

    今後は事業の継続だけではなく、地域貢献、地域との共生にも力点を置いた「産助」といった考え方から地域を支える行動が求められるでしょう。

    実際に東日本大震災の場合にも、発災翌日から建設業や土木業の企業が自発的に率先して自社の設備・機械を使用して瓦礫処理や緊急路・物流路の確保に懸命になっていた事や大手の工場では地域住民に避難場所、炊き出しの提供をしていた姿は記憶に新しいところです。

    これがただいま現在求められている企業の果たすべき役割なのです。

    前置きがだらだらと長くなってしまい申し訳ありません。これより本文にかかります。

    (1)事業継続マネジメント(BCM)の方針策定

    自分達がどうありたいか?自分たちがどうしなくてはならないか?について、経営方針や利害関係者からの要求・要請を整理して事業継続計画(以下BCPと表記)の元となる事業継続マネジメント(以下BCMと表記)の基本方針を策定します。

    生命にかかわる事は当然ながら最優先として、地域貢献、共生についても産助の考え方から優先して考慮すべきでしょう。

    当社の場合は、企業理念を、ⅰ)社会と共生する企業。ⅱ)働きがいある企業。ⅲ)お取引様から信頼される企業。としており、利害関係者の中には社会インフラに強く結びついている公益企業様が多いため

    「従業員の生活を優先し、インフラ復旧に向けた製品、サービスの供給責任を果たす」

    という基本方針となりました。

    (2)実施体制の構築

    方針が決定したら、実施体制の構築が必要となります。BCMの検討や、具体的なBCPの策定を行う責任者、及び事務局メンバーを決めましょう。 

    大企業であれば専門の部署を設けるか総務系の部門に責任者を置けば良いのですが、経営者が実施体制の総括的責任及び説明責任を負わなければならないので、人員の限定された当社では社長が責任者で、事務局メンバーは役員がこれにあたる事としました。

    もちろん、限られた人員でも専任者を立ててBCP策定までを行い、策定以降に専任を解く方法もありかと思います。

    (3)分析・検討

    BCP策定のメンバーがきまったら、緊急事態発生時に自社がどのような被害を受けるのか?自社内の施設や設備、取引先(サプライチェーン)をも含めて分析する必要があります。

    事業中断による影響度や、どの順番でいつまでに復旧を行うのかを決めていきます。(事業が停止しても耐えられる期間の想定)

    事業中断による影響度は次の項目により評価します。例を挙げましたので参照して下さい

    ①売上、利益、マーケットシェアへの影響
    (例)月に一度購入されるような消費財であれば、1カ月を超過すると他社製品にとって代られてしまう。

    ②資金繰り
    (例)長期借入金があるので、仕入先への支払いと給与支払いについて2ヵ月までは維持できるが、これを超過すると支払遅延、給与未払いが発生する。

    ③顧客のBCP及び顧客との取引維持
    (例)顧客へ2か月分の半製品を納入しているが、これを超過すると他社製品が導入されてしまう

    ④従業員雇用
    (例)売上がなく通常通りの給与が支払えない。仕事がなくなり従業員を雇用できなくなる。 

    ⑤供給遅延等による賠償責任
    (例)1週間以上の供給遅延が出てしまい、契約上の賠償責任が発生する

    当社の場合は、資金については中長期借入金や緊急時借入枠を設定しているため三ヵ月以内の運転資金はなんとかなりそうです。

    扱い商品については非常用に寄与する電源設備(バッテリー)が主軸商品であるために、非常対応用仮設バッテリーについては発災当日からの供給が求められると分析し、電源装置については一品受注品であるため1~3カ月以上の猶予があると分析されました。 

     

    事業停止による影響度と業務再開までの猶予期間・その他を分析・検討したところで、次に検討しなくてはならない事は、復旧を早めるためにボトルネックと言われる要素を捉えるということになりますが、これについては次回、お伝えさせて頂きます。

    乞うご期待。

    (沢田秀二)

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