省エネ最新事情⑧太陽光発電はいま?早期に着手した「ナカリ(株)」の事例紹介

    今回の特集シリーズは「検証!あの記事は今?」と題して、ミカドONLINEで過去に掲載した内容が現在どうなっているのか?をテーマに3回シリーズでお届けしています。

    ナカリ様_DSC01395.JPG

    今回は固定価格買い取り制度が始まる前に太陽光発電事業に着手した宮城県のオールライスメーカー、ナカリ株式会社様を取材し、中村信一郎代表取締役社長(写真左)と角田浩志経理部課長(写真右/太陽光担当)にお話を伺いました。

    6次産業化対策事業としてスタート

    最初の太陽光(城生倉庫30kw).jpg

    ナカリ株式会社(以下、ナカリ(株))で太陽光発電設備の設置に着手したのは、東日本大震災よりも前になります。きっかけは、農林水産省の農山漁村6次産業化対策事業の一つとして、再生可能エネルギーの導入促進に予算が付いていることを知り、助成金を活用して取り組んでみようと思ったことだそうです。

    6次産業化とは、農林漁業者(1次産業従事者)が加工(2次産業)や流通・販売 (3次産業)にも関わることで(1+2+3=6)、経営の多角化による事業の安定や雇用の確保を目指す取組みです。

    l最初の太陽光(菜切谷73Kw).jpg

    最初に設置したのは、いくつかある倉庫のうち、二か所の低温倉庫の屋根の一部でした。最大出力は城生倉庫が30kW、菜切谷倉庫が73kWで、二つの太陽光発電設備は2011年(平成23年)の春に完成しました。しかし、商用電力系統に接続するため、関係者が集まっていたその当日に東日本大震災が発生し、系統連系は延期となってしまいました。ですが、幸い内陸部で被害の少ない地域であったため、1か月後の4月に余剰電力買取方式(旧制度)で、正式に稼働を開始いたしました。

    ナカリ(株)の太陽光発電設備は、地区内では一番早い導入でしたが、震災前は産業用再生可能エネルギーへの認知度も低く、当時は電力会社の担当者も制度について確認しながら慎重に進めるなど、「一番乗り」ならではのご苦労もそれなりにあったようです。

    事例を重ねて工夫が生きる

    社会的関心が決して高くなかった太陽光発電事業ですが、やがて震災翌年の2012年に固定価格買取制度が始まり、初年度の買取価格が高く設定されました。そのため、太陽光など再生可能エネルギーを活用した売電事業には様々な業者が参入し、「バブル」と言われるほどになりました。

    ナカリ(株)でも、その後、次々と設備を増設し、現在では最大出力合計が2,742kWにも及ぶ、7か所の太陽光発電所が運用されています。中でも、孫沢発電所は最大出力が1,543kWのメガソーラー。木立の中にあるため、車で付近を通過してもなかなかわかりませんが、広い敷地に太陽光パネルが延々と続く様子は壮観です。今回は、他の施設も含め、空から撮影した写真をお借りすることができました。

    孫沢発電所(名入れ).png
    ナカリ様太陽光6施設(名入れ).png

    ナカリ(株)の太陽光発電設備のうち、野立て方式は、孫沢発電所と観音堂発電所の二か所です。早く完成したのは観音堂発電所のほうですが、このときの経験が、その後の孫沢発電所の設計施工におおいに役立ちました。

    DSC01434.JPG

    後発の孫沢発電所で注意したのは、まず架台の高さ。「最初の設備(観音堂発電所)では、特に意識することもなく、業者の設計通りに設置しました。」(角田課長)。ですが、宮城県内でも雪が多い大崎地方では、「パネルの傾斜下部の高さが40cm程度では、滑り落ちて地面に積まれていく雪のほうが高くなってしまい、下に落ちるはずの雪が堰き止められてしまうことがわかりました。そのため、2つ目の設備では架台をぐんと高くしました。そうすることでパネルの下にも人が入れるようになり、除草も非常に楽になったんです。」(角田課長)

    また、太陽光発電と言えば、複数のパネルが長い一枚板のように連なって設置されているイメージがありますが、角田課長によると、「それも、雪が残ってうまく落ちていかない」とのこと。そのため、2つ目の設備(孫沢発電所)では、「隙間があくように敢えて細切れに設置して、わざとずらして横にも傾斜をつけた」そうです。(※右上の写真参照)

    経験による知恵と工夫で完成した孫沢発電所は、2014年(平成26年)8月に系統連系(商用電力系統に接続)を行い、ナカリ(株)最大の太陽光発電設備として、今も順調に稼働しています。

    しっかりと事業計画を立てれば今後も十分採算は取れるのでは

    mane_160503_01.jpg

    この4年間で、太陽光発電の買取価格が大きく下がりました。現在は、以前ほどの熱気はなく、先行で認定だけ取得したものの、融資や土地の目途が立たず、権利を売りに出している事業者も増えています。太陽光発電事業の今後について、ナカリ(株)社長の中村さんにお話を伺いました。

    中村社長 「やっぱり太陽光は土地なんですよね。うちは倉庫の屋根や、資材置き場だった土地などを活用できましたが、今から土地を探すというのは厳しいかもしれません。売電価格については、現在は24円ということですが、設置コストも以前の半分ぐらいまでに下がっています。弊社の初期の太陽光発電設備は、40円と36円だった年に認定されたものですが、旧制度での買取価格はもっと低かった(22円)ので、自分達は現在の価格が低いという感覚はあまりなく、今でも高いと思うぐらいです。事業計画さえしっかり立てれば、今からでも十分採算は見込めるのではないでしょうか?」

    MAH01390.MP4_000051447.png

    最後に、設備の運用状況を角田課長にお尋ねすると、「ほぼ、計画通りです!」と笑顔の答えが返ってきました。太陽光発電について記事にしたのは2年前ですが、当時は投資目的の話題や大手の大規模なメガソーラー参入など、派手なニュースが多かったように思います。あれから2年経ち、運用が軌道に乗っている事業者さんのお話を伺うと、地に足が付いた堅実な取組みが功を奏していることを感じます。2年前とは大分異なる印象の中で、自分も大変勉強になった取材でした。


    取材協力:ナカリ株式会社 様(主食用上米及び特定米穀の加工販売・酒造米の精米および販売等)、お話:代表取締役社長/中村信一郎 様、経理部課長(太陽光担当)/角田浩志 様、写真提供:ナカリ株式会社、取材日:2016年9月29日、取材:ミカドONLINE編集部